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2021.06.29Vol.500 開けてビックリ玉手箱々々々・・・(ちょこっと実践編)

 彼は一体何歳になったのであろうか。生年月日を調べてみたら、もう24歳になっていた。6月28日生まれなので、後1日遅かったら今日が誕生日だったのに。久しぶりに電話をして近況を教えてもらおうかな。
 入塾してきたのは中1の頃なので約10年前のことになる。当時はほとんどが小学生だったため、意見作文用の教材は無いに等しかった。ここでも何度か紹介している『毎月新聞』の作文課題は彼のために私が作ったものである。私自身に小論文に類するものを教えた経験も無かった。無いもの尽くしの中で、期待されていることに応えるべく試行錯誤を繰り返していた。手探りではあったが、真正面からの体当たりの指導を心掛けていた。逆に言えば、私にできることと言えば、自分の持っているものをすべてぶつけることだけであった。上に立つ者は時に演じることを求められる。だが、それは持っていないものを持っているように見せかけることではなく、内心びくびくしながらも堂々と振る舞うことである。子供は自信がない先生の話に耳は傾けないのだから。実力が伴っていなければうまく行かないことは頻繁に起こる。その自分が開けてしまった穴を埋めた上でさらにそこに少しでも何かを積み上げてみせる、という気概があれば大抵のことはどうにかなる。どうにかなると言っても、安っぽい根性論ではなく、気概とは、何ができるかを冷静に考え、適切な手を打って行くための心のエネルギー源のようなものである。
 高3の夏休みに一橋大学専門のコースを東京の予備校で受講することになりそのタイミングでの卒業となったが、6年弱ほとんどすべての添削を私が行った。思い出深い出来事がある。高校生になったぐらいの頃であろうか、一度試しに読解問題に取り組ませた。すると、お母様から「そんなことを望んではいない。志高塾でしかできない作文をやらせてくれ」というようなお叱りを受けた。そのような明確な意思表示をされたことは後にも先にもその一度きりで、ずっと温かく見守り続けてくださっていた。こういうことを書く時、少なからず戸惑いがある。私がそういう姿勢を親御様に要求しているように受け取られかねないからだ。気になることがあれば遠慮せずに言っていただきたい。そういうことに一つ一つ応えることで我々も成長して行くからだ。もちろん、我々もただ言われた通りのことをするだけではなく、必要であればお断りすることもある。私のことをよくご存知の親御様は私が素直に首を縦に振るとは思っておられないから、直前の一文はいらなかったかもしれない。
彼とお母様とのことで私が大好きなエピソードがある。定期試験の勉強において、英語の分からないところを昔予備校で英語を教えておられたお母様に質問をすると、その周辺のことから説明が始まるので、5分もあれば終わるところが1時間ぐらい取られてしまい結果的にテスト勉強が進まない、とぼやいていたことがあった。それを聞いたとき、「良いお母さんやなぁ」と心からの感想を述べた。出会った中1の時点で既に落ち着きのある子であった。生来の性格もあるのだろうが、お母様のそのような考えが大きな影響を与えたことは間違いない。
 Vol.498を「不思議なことに1年前より一緒に勉強していて楽しいのだ。いや、不思議でないのかもしれない。次回、乞うご期待。」と締めくくった。目先のことではなく、すごく根本的なことを教えられていることに一定の満足感がある。たとえば、英語の勉強で言えば、長男は小さな単語カードの表面に「りんご」、裏面に”apple”と書くようなことをしていた。そんなものは時間の無駄でしかない。それであればまずは中学生(英検4級)レベルの単語帳を1冊さっさと丸覚えした方が断然早い。そこからこぼれたものだけに絞って書き出せば良いのだ。大した量ではなかったが、過去の分はすべて捨てさせた。
 私は効率的と言う言葉を好まない。本来は(効率的)≒(効果的)のはずなのだが、実際は(効率的)<<(効果的)となっているからだ。時間の効率性を示すタイムパフォーマンスは、次の式で表される。 (タイムパフォーマンス)=(成果)÷(時間) 効率的と言うのはタイムパフォーマンスの値を上げることなのだが、世の中の多くの人は、ただ時間を削減することにしか目が向いていないような気がする。たとえば、成果;100、時間;100であったとする。このとき、タイムパフォーマンスは100÷100=1となる。時間のことばかり考えて、それを80まで削ったところで、成果も下がって80、もっとひどい場合として60になってしまえば、それは1、もしくは0.75となる。後者の場合、1が0.75になっているので効率が25%下がったことになる。計算でスピードばかり意識させすぎたせいで、ミスが増えるだけでなく、変な手抜きの癖まで付いてしまう、というのはその典型例である。そういうことも想定した上で、あえて速さを追い求めたのであればそれも一つのやり方ではあるが、正確性が保たれることを期待していたのであればそれは虫が良すぎるというものである。  (ちょこっと実践編)としておきながら、禁止したことに触れただけなので、何をさせるようにしたのかの紹介を。英語塾で複数形や発音記号から単語のスペルを答えるというテストがされていたので、大きな単語カードのおもて面に「歯」、それ以外に複数を意味する”plural”の頭2文字の“pl”と書かせる。そして、裏面には 単数形の“tooth”と複数形の”teeth”とそれぞれの発音記号に加え、名詞を意味する”n”、その他良さそうな例文があればそれも合わせて記入させる。品詞はもちろんのこと、発音記号も慣れてくれば書く必要がなくなるので、あくまでも最初のうちだけのことである。それ以外には、”home”の使い方を間違えていたので、辞書を引かせておもて面に ①我が家に勝るところなし ②明日は一日中家にいるつもりです と並記させ、裏面に ①There’s no place like home. ②I”ll be home all day tomorrow. と書かせた上で、①、②の場合の名詞と副詞を意味する”n”と”adv”と追記させた。”home”のようにいろいろな品詞がある場合は、そこらへんを整理してあげる必要がある。そうすると、おかしな使い方をしなくなるし、別の単語を見た時にも自動的にそのような分類を行えるようになる。これまではすべての単語が一緒くたに放り込まれていたのが、品詞ごとのボックスを設けたことで整理されやすくなる。そう言えば、”home”と”house”の違いを説明し忘れたことに今気が付いた。私は英語指導のプロでも何でもないので、理想的な勉強の仕方を提示したかったわけではなく、時間の先行投資の一例を示したかったのだ。大事なのは時間を掛けることを無駄に思うのではなく、掛けた時間をきちんと回収しようとすることである。イメージ的には、時間を50%増しの150にする代わりに、成果が倍の200になるようにすることである。そうすれば、タイムパフォーマンスは30%以上上がる。長男は、折角作成した単語カードを有効活用していないので、せめて英語塾の授業の前日に見るなどして習慣化するようしつこく伝えているところである。  効率的と言う言葉を好まない私が、前回のVol.499で用いている。ただし、その対象となっているのは、ご飯を食べることであったり学校の準備であったり、と言ったように(成果)自体を変えられないものである。手を打ったからと言って中々うまく行くわけではない。朝起きて、ご飯の後にのんびりとテレビを見ていたにも関わらず、出る直前に準備ができてないことに気付き、焦って取り乱すというのは日常の光景である。朝からそんなものを見せられている親としては、「よくもまあ毎度あほみたいに同じことを繰り返すな」とうんざりする。だが、前の晩に準備するか、朝の無駄な時間を削るか、遅れそうでも泰然自若としていられるようになるか、少なくともどれかはそのうちにできるようになるはずである。ブログなどを通して、それっぽいことを書くから、親としての私も我が子もそれなりにできているように勘違いされることもあるが、まったく持ってそうでない。文章にすることで、言ったからにはやらないとアカンと自らの背中を押したり、言葉にすることで頭の中を整理し自分の心を落ち着けたりしているだけのことである。  500号を意識しないようにしていたのだが、それなりに区切りにふさわしいものになったような気もする。通常2,500字前後のところ3,500字を超えた。中々の大作である。読んでいただく時間が40%増しになるのだが、成果の方はどうなのであろうか。例え今回のタイムパフォーマンスが低いと感じられても、その穴、私が埋めた上でさらなる積み増しを行います。もうしばらくご愛顧いただき、そのチャンスを私に与えていただくことを心よりお願い申し上げます。

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