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2026.07.14Vol.742 ウェビナーでいただいたご質問に対する回答

今回は、7月6日(月)に行った海外在住・帰国子女の保護者向けのオンラインセミナーでいただいたご質問の中で、時間の都合上お答えできなかったものを中心に取り上げる。当初は一問一答形式を想定していたのだが、「~という課題を抱えているのですが、どのようにすれば良いのでしょうか?」「・・・をすれば簡単に解決します」というようなことは基本的にはありえない。それを踏まえると、その課題にまつわる話をある程度丁寧にする必要があるので通常通りの文章形式を取ることにした。
 ウェビナーを行うにあたり、志高塾に通っているインター生の日本語力について考えてみた。たとえば、彼らが小学校高学年で体験授業に来たとき、ある程度論理的に考えられる子は私の経験上5人に1人ぐらいしかいない。彼らの英語力を知らないので推測の域を出ないわけだが、その1人の子はおそらく英語でもきちんと書けて話せるはずである。逆に残りの4人は英語なら論理的、ということはおそらくない。わずか20%なので随分と少ないな、という印象であり、セミナーについて考え始める前の段階では私の思考はそこで止まっていた。ただ、同じ高学年で日本語しかできない子がどれぐらい論理的思考力を身に付けているかと言えば、5人に2人もいないのではないだろうか。おそらくバイリンガルの子が10人に2人、日本語だけの子が10人に4人ではなく3人というのが私の見立てである。要は1割程度の差しかない。バイリンガルの子の親は「論理的思考力が育っていないのは、どちらの言語も中途半端なのが原因かも」と思いがちなのだが、単一言語であっても大差はない、ということが言いたいのだ。
 具体的な質問に移る。漢字に関するものは多かった。「どのように覚えさせたら良いのか?」、「一日どれぐらいの時間を取れば良いのか?」などである。志高塾で具体的に行っていることは次の2つである。1つは日常的なもの。作文の中で書けなかったものを3つほどピックアップして、それを3回ずつ練習させている。その3回で覚えようとする子はこれまた5人に1人ぐらいしかいない。では、後の4人にとっては意味が無いか、と言えばそうではない。その4人の中には、「学校(もしくは塾)での漢字テストは大体満点やから」とアピールしてくる子がいるのだが、そのような発言に対しては「あのな、漢字はテストで点数を取るために勉強するんじゃなくて、こういう作文とかで使えて初めて意味があんねん」というようなことを伝えるようにしている。要は、何のために漢字を身に付けるか、という目的意識を少しずつでも変えるために毎回練習させているのだ。そして、もう1つが非日常的なもの。夏期講習期間中に「漢字丸暗記コース」というのを設けている。親御様にお配りしている「夏期講習のご案内」の中のそのコースに関する説明を抜き出して紹介する。
「このコースの目標は、1学年分の漢字、約200個を夏休みに覚えることです。このコースはテストを行うだけで、漢字の意味や書き順を教えることはありません。毎回20問のテストを行い、16問以上正解すれば、間違えた漢字を1つ当たり10回練習してその日は終了です。合格しなければ30分自習してもらい、再テストをします。最大で90分残ってもらうこともあります。積み上げ式のため、例えば、1回目は1~40までの40個分、2回目は1~80までの80個分がテスト範囲となります。このコースを通して、覚えるためにはどのくらい集中的にやる必要があるのか、忘れないようにするためにはどうしなければいけないのか、ということを肌で感じて欲しいです。暗記ができる人というのは基本的に教科を問わず、どれでも覚えられます。それは『暗記力が良い』からではなく、『どのようにすれば頭に入り、忘れずにいられるかを知っている』からです。」
中学受験向けの進学塾の先生は、漢字と計算は毎朝早起きしてコツコツとやりましょう、というようなことを平気で口にする。それゆえ、親御様から「塾でこのように言われてるんですけど、嫌がって全然やろうとしません。先生、どうしたら良いんでしょう?」という相談を受けることは少なくない。「そういう子は受験で勝てないので、必ず毎朝やらせないといけません!」などということは絶対に無い。「明日も漢字と計算のために早起きするのか」と考えながら寝るのは私なら地獄である。そもそもコツコツとやる子であれば、個人面談などでそのようなことを言われることは無く、全体に向けて発せられたそのようなメッセージも「うちの子はできてるから大丈夫」となり無視できるのだ。そうでないから「コツコツ」を何らかの形で押し付けられるわけだが、元々そうでない子にそれをさせるのは至難の業である。一方で、コツコツやっている子だから安心か、というと話はそれほど単純ではない。なぜだか最近はあまりないのだが、開塾当初は「先生、くもんについてどう思われますか?」ということを時々尋ねられた。それに対する答えは「可もなく不可もなく、です」であった。私自身、算数を2年生から4年生の3年間やっていたので最低限のことは分かっている。連立方程式ぐらいまで進んでいたので、5年生から通い始めた進学塾の文章題、たとえばつるかめ算であったり少々複雑な速さの問題などもそれで解けてしまっていた。一方で、そのくもんの教室で私と同じぐらいのところまで進んでいた小学校の同級生が、公立の学校の教科書に載っている2, 3行程度の簡単な算数の文章問題が解けなかったのだ。それを目の当たりのしたとき、なぜそんなものが解けないのか単純に不思議であった。「可もなく不可もなく」なのだが絶対に気を付けないといけないのは、くもんの算数(数学)は単なる計算でしかなく、子ども自身があれを算数(数学)と勘違いしないようにすることである。漢字も同様である。漢字はあくまでも漢字であって、それを身に付けるのが国語の勉強ではない。そこを間違ってしまわないように先生や親は声掛けをしてあげなければならない。
 その他、漢字を間違える子にも2パターンある。惜しい漢字たとえば、「達」というのは右下が「羊」なので横は3本なのだがそれが2本しか無かったり、後は当て字がそれなりに意味を成している場合である。「運動会当日は、(せいてん)にめぐまれた」は、もちろん「晴天」が正解なのだが、「青天の霹靂」という言葉を知らない子が、空をイメージして「青天」としたり「整天(天気が整っている)」としたりするのは決して悪いとは言えない。「正」や「清」を持って来るのも同様である。一方で、「制」や「西」は好ましくない。後者のパターンであれば、言葉の感覚自体が身に付いていない可能性が非常に高いので、漢字を覚えさせるという過程を通して、そこを磨いてあげる必要がある。実際、HPの「卒業生の声」にも載っている今年東大に現役合格した女の子は小学生の頃からとにかく漢字ができなかった。ただ、言葉はよく知っていて、もちろん正しく使えもしたので、立場上「漢字なんてできへんで良いから」とはさすがに言わなかったが、「もう少しはできるようになりや」程度の声掛けしかしなかった。
 もうすぐ3,000字なのでさすがにまとめに入る。もし、漢字が書けなくても日本語的な感覚をきちんと持てているのであれば、それほど気にしなくても大丈夫である。一方、あまりにも言葉を知らないようであれば、漢字の勉強を通してそこを改善してあげなければいけない。そして、毎日コツコツは難しいので、海外在住や日本のインターに通っている子は、宿題のない長い夏休みを利用して、その間に漢字の勉強だけはガツガツやることをお勧めする。
つづく

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