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2024.07.23Vol.647 藪蛇

 高2の男の子が夏休みを前に辞めることになった。彼が体験授業に来たのは、中2になる春休み前後のことであった。志高塾で国語を学び始めるか、中学入学後から一年間嫌々通っていた英語塾を続けるか、の二択をお母様から与えられ、彼は前者を選んだ。国語ができない息子のことを相談したのが、志高塾の元生徒のお母様で「ちゃんと国語を学びたいのであれば志高塾しかない」という嬉しくもあり、責任重大な勧められ方をされての入塾であった。本人にもお母様にも、折に触れ「すぐに辞めると思っていた」ということを伝えてきたのだが、在籍期間は3年以上になった。その彼が「俺、志望校変えようと思うんすよね」と言い出したのが1カ月ほど前のことである。「今、数学と英語を習っている個人塾の先生が意味も無く怒り散らすのが納得行かないので、どこか良いところ知りませんか」という相談を受け、ある塾を紹介した。遡ること2カ月、6月初旬に行った半年に1回の面談で、お母様に、「『東大か京大を目指します』といつ言い出すのか、私はずっと待っています。今の志望大学は彼には合っていません」と率直な意見を述べた。それを聞いて、お母様は「本当ですか?先生がそのように言っていた、と伝えておきます」とおっしゃった。彼が通う進学校では事あるごとに先生たちが「東大、京大に行け」と言い、お兄さんが東大に行っていることもあり、それらへの反発として、大学受験を意識し始めた1年前ぐらいから、家から近い国立大学に行く、ということを彼はあえて口にしていた。心がそのような状態のときに正論を吐いたところで逆効果なので、「まあ、そういう考えもあるわな」と耳を傾けることに徹していた。私が推した塾に移ることが引き金となり、志高塾を辞めることになった。しかも面白かったのは、彼は志高塾の電話を使って、その塾の体験の申し込みをしたのだ。世間一般ではこういうとき「藪蛇」という言葉を使う。辞書に「余計な事をしたために、いらぬかかわりあいになり、思わぬ不利や災難を招くこと」とある。しかし、落ちていた枝で草が生い茂っているところを私がつついたわけではなく、自らの意志で藪から出て来たので、私がすべきことは餌がたくさんありそうな藪に誘導することであった。大学受験までどのように成長して行くのかを見届けたかったが、物理的(時間的、金銭的)なことが原因なので、「がんばれよ」と応援するのが、「何かあったら、またいつでも相談に乗るからな」とオープンな状態にしておくのが我々の役割である。
 2週間ほど前、小4の秋から5年弱通ってくれている中3の女の子のお母様より「先生、すみませんが辞めさせていただきたいです」との連絡をいただいた。そういうとき、基本的にはその理由は聞かないのだが、「先生聞いてください」ということだったので、そこから話が続いた。大学附属の小学校からそのまま大学まで進む予定にしていたのだが、本人が急遽医学部に行きたいと言い出したことがきっかけで、医学部専門の予備校に通うことにした、ということであった。時々、高校生の生徒たちに「『メディカル志高塾』という名前にして、授業料上げまくってボロ儲けしたろうかな。グへへへ」というような冗談を言うことがあるのだが、そういう類の塾はとにかく授業料が高い。だからと言って、国立の医学部に多数の合格者を出すわけではなく、そのほとんどが私立である。彼らは二言目には「情報」という言葉を口にするのだが、受験における何よりもの情報は過去問である。それさえあれば、後は実力を付ければ良いだけの話なのだ。医学部と他の理系学部でやることは基本的に同じで、私立の医学部は小論文試験が課されるところが多い、という傾向はあるが、それも何ら対策が難しいわけではない。現在、東海大学の医学部に所属している元生徒は、エスカレーター式で大学に進学したものの、医者になりたい、と一念発起し、入学後すぐに大学を辞めた。それ以上親に金銭的な迷惑を掛けないように、宅浪する道を選んだ。1年目はうまく行かず、2浪が決まったときに、小論文対策だけは一人でできないとのことで高槻校にやって来た。そして、そこから一年で見事に合格を勝ち取った。小論文対策で言えば、私が認識している限り慶応のSFC(総合政策学部・環境情報学部)が一番難しいが、現在3回生と2回生に卒業生がいる。過去たった2人しか合格していないが2分の2ではある。また、この春IB(国際バカロレア)入試で岡山大学医学部に現役で合格した生徒の小論文対策も我々が行った。IB入試に関する実績はゼロだったが過去問はあった。それで十分だったのだ。上で挙げた生徒の小論文、誰一人として私は教えていないことを念のためにここで断っておく。その予備校、数学が週1回3時間の授業で年間150万弱もする。数学は1回では足りないから2回に増える。それに英語、小論文対策などとなると、一体いくら掛かるのか。ある程度続けたら引くに引けなくなり、勧められるままに取らされることになる。「うちを辞めるのは全然良いんですけど、そこだけは絶対に止めた方が良い」ということをお伝えした。電話の最後、「志高塾を辞めるの、やっぱりキャンセルします」となった。宅浪はあまりにも極端ではあるが、あくまでも自分でやれるだけのことをやって、どうしても足りない部分を誰かにサポートしてもらうという基本姿勢は受験を通して身に付けて欲しい。彼女は、志高塾という藪から良い匂いのする別の藪に向かって飛び出そうとしたものの思い直した。
 2人の生徒、1人は辞めることになり1人は留まることになった。対極の結果になったわけだが、私の対応をまったく同じである。彼らにとって何が良いのかを考え、それをありのままに伝えた。自分の、自分たちの利害得失は横に置いておき、子供のたちの未来が明るくなるような提案をし続けられる人、塾でありたい。その結果、あまりにも生徒が減ったら、「メディカル志高塾」に看板を付け変えよう。経営者としての志はまったく持って高くないので、「メディカル志向塾」の方が良さそうである。

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