
2か月前に始めた社員のブログ。それには主に2つの目的がありました。1つ目は、単純に文章力を上げること。そして、2つ目が社員それぞれの人となりを感じてとっていただくこと。それらは『志高く』と同様です。これまでXで投稿していたものをHPに掲載することにしました。このタイミングでタイトルを付けることになったこともあり、それにまつわる説明を以下で行ないます。
先の一文を読み、「行います」ではないのか、となった方もおられるかもしれませんが、「行ないます」も誤りではないのです。それと同様に、「おなじく」にも、「同じく」だけではなく「同く」も無いだろうかと淡い期待を抱いて調べたもののあっさりと打ち砕かれてしまいました。そのようなものが存在すれば韻を踏めることに加えて、字面にも統一感が出るからです。そして決めました。『志同く』とし、「こころざしおなじく」と読んでいただくことを。
「同じ」という言葉を用いていますが、「まったく同じ」ではありません。むしろ、「まったく同じ」であって欲しくはないのです。航海に例えると、船長である私は、目的地を明確に示さなければなりません。それを踏まえて船員たちはそれぞれの役割を果たすことになるのですが、想定外の事態が発生することがあります。そういうときに、臨機応変に対処できる船員たちであって欲しいというのが私の願いです。それが乗客である生徒や生徒の親御様を目的地まで心地良く運ぶことにつながるからです。『志同く』を通して、彼らが人間的に成長して行ってくれることを期待しています。
2023年12月
2025.05.30社員のビジネス書紹介⑳
徳野のおすすめビジネス書
『何が教師を壊すのか 追い詰められた先生たちのリアル』朝日新聞取材班
『資料読解』に、日本の特に公立校における教員の労働環境を取り上げた題材がある。平均勤務時間や各業務(教材研究、課外活動、事務作業など)に当てられている時間をOECD加盟国内で比較するグラフを通して、生徒たちと一緒に我が国の教育現場の現状を明らかにしていくのだが、数値だけでは拾い切れないものはある。それを分かっていて、しかもかつては12年間ほぼ毎日接していたのに、そもそも私自身の学校教員の実態に対する解像度がまだまだ低い。今いちど「生の声」に触れるためにも本作を開いてみた。
教員採用試験の倍率は2018年以降最低記録を更新し続けている。1970年代のベビーブームに対応する形で大量採用された世代が定年退職する影響で採用枠が増えただけで、実質的な志望者数に大きな変動は無いとする見方もある。だが、文部科学省がいくら取り繕おうとも、受験者数が減少の一途を辿っているのは事実だ。加えて新任教員の離職や若手の休職も増加している中で、特に小、中学校での人手不足が深刻化してきている。大学生への訴求力を高めようと、自治体によっては試験科目の一部免除や採用時期の早期化が実施されているが、予算面の負担を最小限に抑えることの方に重きが置かれてしまっている。優秀な人材を呼び込むには、小学校教員の3割、中学校教員の6割が過労死ラインの月80時間を超えて残業している現状の改善が喫緊の課題なのだ。
長時間労働が常態化している背景には主に「給得法」と、「スクラップ&ビルド(解体と構築)」ならぬ「ビルド&ビルド」の様相で増大していく業務量がある。前者は基本給に教職調整額4%を上乗せする、簡潔に言うと「調整額分を超えた残業代は支払われない」制度である。2008年の「ゆとり教育」終焉以降、学習量と共にそれに関連する煩雑な事務作業も年々上積みされている。そこに職員会議や経理事務、保護者対応が加わってくるため、課外活動の顧問も務めている教員の中には授業準備を犠牲にせざるをえない者も少なくない。教育の質に関わるとなると生徒やその家庭にも悪影響が及ぶ。
実態に即した金額を支給するなど到底無理な話だろう。だが、「支払わなくてはならない」と明確に定められれば、管理職側も残業時間の削減に向けてデジタル化の推進や外部人材の登用の必要性に迫られるようになるし、国や自治体も法の面で動き始めるはずだ。取材班は仕組みづくりの重要性を強調する。
そして、働き方改革の目的とは、一人ひとりが心身ともに健康な状態で日々の仕事に「やりがい」を感じられるような環境を作ることだと再認識できた。管理職が一律なやり方で業務量を減らしたり、給与を上げたりするだけでは教員どうしの、さらには学校と保護者の間に摩擦を生む場合もありえる。学校であれば保護者に職員会議に出席してもらうという風に、立場を越え膝を交えて話し合う中で各々が何を望んでいるのかを浮き彫りにするだけでなく、絶対に見失ってはならない目標を共有する時間を通して協力体制が出来上がっていく。
三浦のおすすめビジネス書
『リーダー1年目のマネジメント大全』木部智之
授業を行う教室の中では、自分はひとつの「リーダー」だ。常々、自分はチームの一人であるにすぎず、「リーダー」という立場ではない気がしていた。しかしその認識はそろそろ改めなければならない。自分一人が授業をできればいいわけではなく、他の講師にも頼りながら進めていく以上、「教室の質を上げる」ためには、自分の「リーダーとしての質を上げる」ことが必要不可欠なのだろう。
当初は「大全」というだけあって、これまで他のビジネス書で見たことがあるな、ということが改めて整理され、網羅されている。そもそものマネジメントとは「人と組織を運営する」力のことで、リーダーに求められるもう一つの要素であるリーダーシップが「人と組織を動かす」力のことである、と整理されていた。どちらものスキルを身に着け、メンバーの指針やモチベーションを管理し、それが上手く運ぶようにするのがリーダーの役目だ。
その際、見ていて個人的なポイントだと思ったのは、「メンバーの変化に気付くこと」、「数字を常に意識すること」、「将来を見据えたサイクルを打ち立てること」だ。生徒に対しては、比較的イメージしている。勉強外のことやその日の表情に気を配り、時間や本数を意識し、わかりやすいところで言えば受験から逆算して教材の進度を考える。しかし、それを他の講師にも生かせているか、もっと言えば「自分をそのような目で見ることができているか」という点はまだまだ未熟だ。
セルフマネジメント、という言葉がある。これまでマネジメントの本を読んだ時を思い出し、自分という視点が欠けていることに気づいた。自分をマネジメントできないのに、他人をマネジメントできるはずもない。まずは自分を相手に練習し、それをメンバーにも活用できるようにしていきたい。それが私の「1年目」、になるのかもしれない。
竹内のおすすめビジネス書
『すごい傾聴』小倉広
子どもたちのためになる良い授業は、自分一人ではできない。講師間で連携を取ることや、親御様との情報共有によって実現する。対面でも電話でもメールでも、コミュニケーション自体はこれまでにも取ってきているのだが、話しやすい空気をどうやって生み出すのかは対話が常に必要な人間としての課題である。
ビジネスの場で実践されているコミュニケーションは、知識や技術の伝達をする「ティーチング」、「傾聴」をベースにしながら相手の目標設定やその達成をサポートする「コーチング」、そしてただひたすらに「傾聴」をする「カウンセリング」と大きく3つに分けられる。実際にはこれらのどれか1つに特化するのではなく、そのときに最も有効な方法を選んでいったり組み合わせたりすることで効果が期待できる。ただ、ティーチングやコーチングが適切なものであるためには、傾聴を通じての相手への理解が不可欠である。そしてここで注意したいのは、聞き手である我々が理解するのと同時に、話し手である相手も「気付き」を得るということだ。目的を達成するために何をすべきか、ということのもう一つ手前に、自分自身の思考の癖や価値観に対する客観的視点を持つこと、それが共有されることが、前進するエネルギーへと変換される。この「傾聴」とは、何も相手の発言に対してただ肯定し続けたり、「そうなんですね」とオウム返ししたりすることではない。また、原因を明らかにすることを急ぐことでもない。目の前の相手がどのようなストーリーを持っていて、何を感じてきたのか、それを聞き取り、その人の信念を知ることである。個別性を認められることは心理的安全性をもたらす。本書を読んでいて興味深かったのは、聞き手が「傾聴」の方法を身につけていくで、自身に対しても「傾聴」するようになるということだ。初めは相手の話に口出ししたくなることがある。その心の動きから目を背けなければ、自分自身が何にこだわっているのかも見えてくるのだ。
これまでにたくさんの生徒はもちろん、親御様や講師たちとの関りを持ってきたことで、「こういう事例があります」と伝えられることは増えた。しかし、今自分が面と向かっている相手にそれが真に適切であるかどうかという点は慎重に判断しなければならない。特に意見作文でのやり取りはこの「傾聴」に似ている。テクニックとしてではなく、それが生徒の持ち味を引き出すために不可欠な姿勢として、これからも磨いていく。