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2026.09.15Vol.751 「緩める」とはどのようにすることなのか

 来週1週間教室がお休みをいただきますので、それに伴いブログもお休みとなります。
 しりとりのように一直線に、とまでは行かないまでも、行きつ戻りつしながら頭の中に思い浮かんでいる複数の事柄をうまく結びつけることを目的の一つとして話を進めることとする。まずは、以下の記事に関することから。
OpenAI、最先端AI開発ペース緩めるのも選択肢-CEOが社員に語る(Bloomberg) – Yahoo!ニュース
冒頭の段落で、次のことが述べられていた。
「米OpenAIは最先端のAI開発ペースを緩めることを検討している。ChatGPTを手がける同社のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、他のAI企業も同調することを期待している。」
「緩める」という言葉の取り方にもよるだろうが、そのようなことは不可能であろう。これに関連して思い出したことが3つある。1つ目は、クローン技術。1996年にスコットランドで生まれたクローン羊のドリーは当時ニュースでもよく取り上げられていた。その後、倫理的・安全上の懸念から、人間の個体を作り出す「生殖用クローン」を禁止する法律が日本を含む世界各国が作られた。その少し後ぐらいに私が読んだ記事では、「中国が密かにクローン人間の開発を進めるかもしれない」ということが述べられていた。上記の提案にイーロン・マスクも賛同しているが、アメリカが一休みしている間に中国が開発を進めるのではないか、ということが懸念されている。そして、2つ目がAI同士の会話。AI同士に会話をさせたところ、人間が理解できない新たな言語を生み出して、やり取りを始めたということが話題になった。既存の言語ではまどろっこしいからというのが、その理由らしい。その他、OpenAIにおいて、自律型のAIエージェントがサイバーセキュリティーに関する課題を解くために自律的に隔離環境を脱出し、他社のシステムに侵入するという暴走事案が起こっている。
 3つ目はAIのことから大きく離れるのでここで段落分けをする。受験のときの「余力を残す」ということについてである。目標に向かって一生懸命にできる限りのことをする、というのは決して悪いことではない。志高塾を始めた頃、私が教育業界に身を置いたことがなかったため、中学受験にあまりにのめり込む親子がいることに正直驚いた。私は適当に中学受験の勉強をして、ちゃんと不合格になったので、そんな私が「そこまでやる必要はないですよ」といったところで何の説得力も持たなかったこともあり、しばらくそれについて考えていた。正確には、頭の片隅に宙ぶらりんの状態で留まっていた。おそらくそこから何年か経って、「あっ、そういうことか」となった。余力を残す、というのは「本当は8時間勉強できるけど、少しセーブして6時間にしておこう」ということではない。具体例を提示する。灘を目指していた小6の男の子が夏期講習期間中に大手塾の貴重な休みを利用して、確か5時台か、遅くとも6時台には起きて直島に日帰りで行った、ということをお母様から教えていただいた。それは1日だけのことだが、彼は受験勉強がどんなに忙しくてもバイオリンはずっと続けていた。要はこういうことである。5年生までは勉強以外のことに4時間費やしていたが、さすがにそこまで割くことはできないので、最後の1年間は2時間だけにしよう、というのが余力を残す、の正体である。だから、AIも緩めるのではなく、これまでは開発に一辺倒であったが、それなりのエネルギーを規制強化の方に注ごうということなのであろう。
 ここで、前回に引き続き塩田武士の『崩壊』から本宮と優子の登場である。

本宮には水やプラスチックがなぜ芸術なのか、ちんぷんかんぷんであった。一方の優子は興味があるようで、金沢の美術館や香川県の直島などにある施設について話すと、美嘉もこのときばかりは表情を和ませた。
「金沢には輝と二度行ったことがあるんですが、直島は一度もなくて。いつか二人で行きたいねって話してたんです」

金沢の美術館とは九分九厘、金沢21世紀美術館のことであり、2人の世界的な建築家、妹島和世と西沢立衛による建築ユニットSANAAが手掛けた。10年ほど前にそこは家族で一度訪れている。来週1週間の休みを利用して、二泊三日の旅程で、一人で直島に行く予定にしている。今回で3度目となる。また、直島からフェリーで20分ほどのところにある豊島にまで初めて足を伸ばす。そこにある豊島美術館を設計したのは西沢立衛である。
 先の生徒は難なく灘に合格し、現在、京都大学工学部情報学科で学んでいる。大学入学のタイミングで一度お母様とコンタクトを取ったのだが、そのときにはバイオリンでプロを目指すかどうか、ということを話されていた。情報学科なので、間違いなくAIについて学んでいるはずである。旅行中の3日間は直島と豊島にある美術館を訪れる以外にはほとんど何もしないはずである。いつもと違う環境に身を置くことで、宙ぶらりんになっていることの中から1つぐらいは、「あっ、そういうことか」となるものが出て来てくれるかもしれない。  
 ここまで書き上げて、一休みした後に最終チェックをしてアップする予定にしていたのだが、その間に『崩壊』を読み進めていると次のような一節があったので、それを紹介して締めとする。塩田武士との相性はすこぶる良さそうである。「緩める」という言葉も使われている。

「神陽にやってからはさらに熱を上げましてね。しかしね、地元の中学ではトップでも、進学校に行ったら真ん中辺りを維持するんがやっとなんですわ。あいつは昔から絵を描くんとか、工作するんが好きでね。学校でも美術部に入ってたんです。俺はそれが気に入らんかった。美術なんかにかぶれてるから成績が上がらんのやと決めつけて。今考えたら、受験が終わってあいつもひと息つきたかったんかもしれません。締めるばっかりで緩めることをせえへんかったから。それに行きつけのスナックとかにも『息子を東大に入れる』って言うてしもてるんで、そういう変なプライドみたいなもんに自分で追い詰められてるとこもあって・・・・・・・」
 プライドではなく単なる見栄だと、本宮は無言のうちに昌男の身勝手な言い分を胸の内で修正した。
「これは本腰入れなあかんと、美術部を辞めさせて京大生の家庭教師を付けたんです。それでも一学期の期末テストが散々でしたから、輝が持ってる漫画本と美術本を全部捨てたんです。三百冊ぐらいはあったんちゃうかな。そんときは泣いて抗議されてね。おもいきり張り倒したんですわ。ほんなら睨まれてね。子どもにあんな恨みのこもった目されたらたまりませんよ。かわいそうやと思いましたけど、なんやこっちも腹も立ちましてね。こいつは俺のことバカにしてるんちゃうやろかって。まぁ、被害妄想みたいなもんやけど」

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