
2か月前に始めた社員のブログ。それには主に2つの目的がありました。1つ目は、単純に文章力を上げること。そして、2つ目が社員それぞれの人となりを感じてとっていただくこと。それらは『志高く』と同様です。これまでXで投稿していたものをHPに掲載することにしました。このタイミングでタイトルを付けることになったこともあり、それにまつわる説明を以下で行ないます。
先の一文を読み、「行います」ではないのか、となった方もおられるかもしれませんが、「行ないます」も誤りではないのです。それと同様に、「おなじく」にも、「同じく」だけではなく「同く」も無いだろうかと淡い期待を抱いて調べたもののあっさりと打ち砕かれてしまいました。そのようなものが存在すれば韻を踏めることに加えて、字面にも統一感が出るからです。そして決めました。『志同く』とし、「こころざしおなじく」と読んでいただくことを。
「同じ」という言葉を用いていますが、「まったく同じ」ではありません。むしろ、「まったく同じ」であって欲しくはないのです。航海に例えると、船長である私は、目的地を明確に示さなければなりません。それを踏まえて船員たちはそれぞれの役割を果たすことになるのですが、想定外の事態が発生することがあります。そういうときに、臨機応変に対処できる船員たちであって欲しいというのが私の願いです。それが乗客である生徒や生徒の親御様を目的地まで心地良く運ぶことにつながるからです。『志同く』を通して、彼らが人間的に成長して行ってくれることを期待しています。
2023年12月
2025.06.27社員のビジネス書紹介㉑
三浦のおすすめビジネス書
『ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』西村栄基
当然のことながら、書名の「3倍休んで」は日本よりも休日日数が多く労働時間が少ないことを、「成果は1.5倍」は労働生産性や一人当たりのGDPの数値が日本よりも高いことを指している。具体的な数値は載っていなかったので別のデータをざっくりとあたったが、労働時間でいえば日本は年間1,610時間ほど、ドイツは1,340時間ほどだった。日本はここから残業などが発生すること、一方でドイツは原則残業をしないことを考えると、差はもっと広がるだろう。(日本は短時間労働者も多いようで、それがこの数値に関係しているらしい)。また、休日日数もドイツの方が多く、年間30日の有給をすべて使い、二、三週間の休暇を取ることもまったく珍しくないとあった。日本は有給の消化率が高くなく、およそ18日だというので、おおよそ1.5倍は確かにドイツの方が休んでいる。
こういったドイツ人の働き方について、まず文化としての「早起きの習慣」「整理整頓の習慣」、「プライベート(個人)の時間を確保する習慣」が根本にあるという。このうちの前者二つは身につまされつつ、実践はできそうにないので置いておく。最後の「個人の時間を確保する」というのが、労働生産性に直結するのだろう。17時終業の場合、17時にはオフィスを出る。そのために日中の効率をどれだけ上げられるか、である。
年始に一年の間のどこに休暇を入れるのかを考える、そして仕事の進め方にも見通しをつけておく、と紹介されていた。これに代表されるように、全体のマップのようなものを描いているのが一つ大きなポイントだろう。仕事終わりに翌日のタスクを洗い出しておき、翌日出勤時には朝の時間を使ってそのタスクを優先度順に分ける……ということも述べられていたが、「どう進めていくか」を考えることに時間を割くことで、後々の効率化を図るのは重要なことだ。トラブルへの対処ひとつとっても、ただ場当たり的にするのではなく、「後にも効果を発揮するように」と熟慮する時間を設けるともあった。ただ焦って対処するのではなく、落ち着いてトラブルの根幹を探り、原因を切り分ける。もっと見通しを立てて働けるように工夫しようと思わされた。
徳野のおすすめビジネス書
『アメーバ経営 ひとりひとりの社員が主役』稲盛和夫
「アメーバ経営」とは、大組織を独立採算で運営する集団に分けて、各チームに任命したリーダーと共同経営者のような関係を築いていく手法である。その一つあたり5人から10人で構成されるチームが「アメーバ」と呼ばれる。京セラおよびKDDIを創業した稲盛和夫が考案者であり、会社の財務状況を可能なかぎりきめ細やかに分析すると共に、各アメーバが独自に設定した目標の下で全ての社員が主体性を持って仕事に当たる組織を実現するために編み出された。
ちなみに私は今年の1月から3月にかけて受講した「AI経営講座」を通して本著を知った。講義では昨今のトレンドワードとも言える「人的資本経営」の関連項目として一言触れられただけで、それを聞いた時は「社員一人ひとりのスキルをどう扱っていくか」に主軸が置かれた内容を思い浮かべていた。
しかしながら、京セラを一代で大企業に成長させた稲盛氏の視座は、私の想像よりも遥かに高かった。新しいメソッドを導入するだけでは全アメーバのトップとしての役目を果たしたことにはならない。自立した複数の小集団が同時に活動するとなると、どうしても衝突が生じやすくなる。製造業であれば営業部と生産部の間の摩擦は日常茶飯事であり、京セラもその例外ではなかった。そこで重要になってくるのが、「人間として正しくあれ」という経営哲学である。ただ、稲盛氏は従業員たちの良心に訴えるだけでは不十分であり、利害の不一致で争っている部下たちの声に耳を傾けて公平な判断を下したり、彼らが所属集団の垣根を越えて協力し合える環境を整えたりすることが社長の使命だ、と強調する。
稲盛氏が仕掛けた「仕組み」の中で印象的だったのは報酬のあり方だ。京セラは欧米流の成果主義を導入していない。メンバー間の差が数値化されることへの抵抗感が強い日本人の気質を考慮してのことだが、何より月単位のインセンティブは短期間しか効果を発揮しないからだ。売上はうなぎ上りを続けるものではないという認識が無いまま成果主義を導入しても、業績が停滞した途端、同時に個々の従業員だけでなく集団全体の士気も下がっていく恐れがある。反対に、一人ひとりのモチベーションが維持されるようなアメーバでは、お金ではなく仲間からの賞賛が「報酬」となる。精神的な充足を重視する文化があれば、難局に直面しても自分と組織のために乗り越えようと努力する。
物理的なご褒美ありきで人を評価しない姿勢は、子育てにも通じる部分があると思う。どこかのネット記事で読んだ内容になるものの、「欲しい物を買ってあげるから頑張ろう」という親の声掛けは、「勉強はご褒美が無いとやる気が出ないほど嫌なもの」という刷り込みに繋がるから避けるべきとのことだ。稲盛氏はビジネスを通して、単なる「商人」ではなく、より本質的な「人格者」を育成してきた優れた教育者だったのだと実感させられる。
竹内のおすすめビジネス書
『世界は経営でできている』岩尾俊兵
「経営者」と聞けば孫正義や柳井正、イーロン・マスクなど、世界規模でお金を動かし、その動向が注目されるような人物が思い浮かぶ。不勉強なのでまだまだ彼らの著作を手に取ることができていないが、この3人だけを見ても共通しているのは、「世界を変えていく」という理念を掲げている点である。経営とは本来、自身も他者も幸せにする「価値創造」が目的である。その過程で必要な手段を見直したり、実現の障壁となる対立を解消したりしながら豊かな共同体を作り上げる。企業経営、学校経営、病院経営といった言葉は何となく馴染みがあり、「経営」=「お金儲け」というイメージが先行しがちだが、実際には利益は人々がその価値を認めたときに生まれるものであり、そして次の価値を創り出していくための手段に過ぎない。それなのに、今ある価値の取り分を大きくすることに心血を注いでしまうような誤った経営概念が流布している。
不合理をそのままにせず、それに関わる人々それぞれに利があるようにすること、それが経営である。その意味では、仕事はもちろんのこと、家庭や学校でのやり取りも当てはまる。授業中に早く問題を解き終わった生徒が他のことをするのを認めないのではなく、授業にみんなが参加することを目指すのであればまだできていない子に説明する役割を与えるというような形を模索していく必要がある。目的が何であるのかをその共同体で明らかにしていくことが、新しい道を切り開いていくきっかけになり得る。
余談だが、本書は15の章から成っており、各章の終わりに参考文献が示されている。論文から古典的な哲学書、比較的新しい大衆小説までもが挙げられており、その幅の広さに驚かされる。それに加えて、家庭や勉強に関する非目的的な事例は自分自身の体験の有無に関係なく、鮮明に思い浮かべられるものが多い。常々たとえ話の上手い人は物事の解像度が高く、話が面白いと考えていたが、それを裏付けるような一冊だった。