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2026.05.15Vol.93 下手上等(竹内)

 教室休みの最終日、この春卒業した元学生講師が所属する楽団が参加するという東大阪市民祭りを訪れた。地元の様々なサークルがステージ発表を行うのだが、いくつかのダンス教室では出番の前後に「初心者の方も大歓迎です!」と未来の生徒に呼びかけていた。小学校低学年くらいの子たちはやはりまだ動きにぎこちなさがあるものの、高学年の子や中学生らしき子などは滑らかで緩急が付けられていて様になっている。歴は違うだろうし元々のリズム感なども当然影響するのだろうが、レッスンを重ねることでどういうことができるようになるのか、というのが結構分かりやすく感じられた。大勢の人前で披露することに緊張もある中、笑顔を絶やさない子が多かったのも印象に残っている。言葉しか使えない自分からすると、体で表現できることは羨ましい。こういう場をきっかけに新たな世界へのドアを開く子がいるのであればそれはとても良いことだ。
 ただ、こういう時の「初心者」とはどのくらいのものが想定されているのであろう。募集の対象に自分が入っていないことは一旦横に置いておいて、未経験者でも構わないという触れ込みであったとしても、「それ本当ですか?」と疑ってしまうくらいには私は運動音痴である。厄介なのは、下手くそなのにそういうのをやってみたいという良く言えば好奇心があるところ、悪く言えば身の程知らずなところだ。公立の中学でソフトボール部に所属していたことはこれまでも生徒に対して話題にしたことがあるが、特に1つ上の代は地区予選を突破し県大会まで、下の代は他校との合同チームでありながらも市内予選から阪神大会まで進んだ実績を持ち、西宮ではそれなりに強かった。どうしてそんなところに入部したのかと問われれば、「廃部にしたくなかったから」ということになる。入学当初、バスケ部やテニス部に人気が集中し、ソフトボール部を希望した生徒はゼロだった。私はというと、小学生の時に高校野球にはまった勢いで野球部の顧問に直談判してマネージャーとして入部していた。今思い出すとよく認めてもらえたなという感じである。しかし1年の冬にふと、自分のすべきことがそれではないような気がした。このように書くとものすごくかっこいい選択のようだが、親にも、体育の成績を知っている担任や顧問にもやめておいた方が良いのではないかと引き留められたし、初めての練習でダッシュをした私に向けられた先輩方の「これが全力疾走?」という驚きの目を忘れることはない。それでも、野球部と同じグラウンドで毎日練習に励んでいる姿を見ていると、なぜかやりたくなってしまったのだ。チームにかけた迷惑は計り知れないが、強くて厳しいチームで必然的にキャプテンを務めることになったのは得難い経験である。高校では大会を通じて仲良くなった別の中学出身の友人と誘い合わせてまたソフトボール部に入り、部員集めに奔走した。ここでこそ野球部のマネージャーをすれば良かったのかもしれないが、自分という枠を超えたことで身につけられたもの、出会えた人や感じた気持ちはたくさんある。得意じゃないけどやってみたいという純粋な思いは絶対に掬い上げるべきだ。
 ここで辞書を引いて「初心」の項を見てみる。
①何かしようと最初に思いたったときの、ひたむきな気持ち。初志。
②学問・技芸などを、習い始めたばかりであること。
③世なれていないこと。
すっかり視点が抜け落ちていたが、「初心者」=「下手」が必ず成立するわけではないということだ。初めて習う場合は当然未経験ということになるものの、めきめき上達することも往々にしてある。だから、「初心者大歓迎」なのである。私は上手くなるまでにものすごく時間がかかるから、後から始めた人の方が断然良い動きをしていることをたくさん見てきたから、せっかく優しい言葉をかけて誘ってもらったとしても相手をがっかりさせてしまいそうで怖いという気持ちが先行するのかもしれない。でもこれは、分野は違えど今自分が子どもたちや講師たちに働きかけるということを毎日している中で、相手に対して抱いている気持ちは良い意味で「期待」ではなく、「楽しみを見出してほしい」というものであるのだと理解している。
 先述のお祭りから遡ること4日前。豊中校から歩いて10分ほどの大門公園で中2、中3の女子生徒たちとキャッチボールをした。中2の生徒がこの一年を本当にだらだらと過ごしていたので、体を動かす部活をしたらと春休みに声をかけていたのだ。その後の状況を尋ねるとなんとソフトボールを始めたとのことだったのだが、本人曰く「下手くそすぎてユニホームがもらえない」らしい。何かやるべきと勧めていたのは自分だし、せっかく挑戦したものが面白くないまま終わってしまうのは残念なので、実家からグローブとボールをどうにか引っ張り出して名ばかりの練習会を決行することにした。中3の子は「やってみたい」ということで駆けつけてくれた。投げる時の肘の高さやグローブを相手に向けること、受ける時のポケットの感覚など、初歩的なことを説明するくらいしかできなかったが、約1時間でパシッと良い音が響くことも、良いボールが行くことも何度かあって2人とも満足げだった。私がばりばりのスポーツマンではないことが、2人が気楽に参加することに繋がったのなら下手くそ冥利に尽きる。「できないから嫌い」よりも、「できなくてもなぜか好き」が多い方が、日常はきっと豊かになる。
 その生徒の学校では部活動がターム制なので、夏には活動が終わってしまうのだが、あと2回は練習しようと約束した。6月の予定を確認中である。

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