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2017.08.15Vol.314 自分が欲しいモノ

 来週の火曜日は、個人的に休みをいただいていますのでブログはお休みさせていただきます。代わりに、9月のシルバーウィークの塾が1週間休みの期間にアップします。

 相場英雄の『震える牛』からの引用。
「息子と親類の家に遊びに行きました。その時、近所のスーパーに出かけ、棚で自社製品を見つけました。息子に買ってくれとせがまれましたが、買うことができませんでした。」
小松は目を充血させ、写真に見入っていた。
「自社製品を食べられない社員は失格だ。なんとか混ぜ物を止めさせることが父親の役目だと遅まきながら気づかされたわけです」
(中略)
<安物に慣れ切った消費者に繊細な舌などない>
<オックスマートの売り場を見ろ!半額セールをやると飛びつき、列を作るようなバカがたくさんいる。こんな連中が味なんか分かるわけがない!>
鶴田は震える指で停止ボタンを押した。
「安ければなんでも良いという消費者にも問題はあります。しかし、あまりにも顧客は実態を知らなさ過ぎる。ミートボックスは歪んだ現状を逆手に取ったデフレの申し子です。そんな企業とオックスマートを許しておけますか?」
小松はそう言い、唇を強く噛んだ。唇から血が流れ出しそうだった。

 この本は社会派ミステリーという分類になるのだろうか。ここで、登場人物の説明などを。小松はミートボックスの元従業員。息子とのやり取りがきっかけで、消費者を騙して質の悪い肉を売りつけるべきではないと社長に進言した結果首に。<>の中はその社長の朝礼での発言。それを隠れて録音したものをジャーナリストの鶴田に聞いてもらっている場面。いわゆるマスコミへのリークである。オックスマートは明らかにイオンをモデルにしている(イオンがそのようなことをしているのかどうかは知らないが)。ミートボックスは老廃牛(乳牛としての役目を終えた牛)のクズ肉を原型がないようにし、かつそこに添加物などを大量に混ぜて臭いなどをごまかして製品にする機械を売っている。
 読んでいてこの部分が目に留まったのは、新しく講師を採用した際に渡すプリントに「講師心得」という項目があり、「子供に好かれようとしない」などと並んで「自分にとって最も大事な人に紹介できる教室にする」というのを入れているから。小松は、我が子に自分が売っているものを食べさせることができなかった。
 この文章をどのように結ぼうかと考えていたとき、偶然ネットニュースで株式会社ほぼ日を経営する糸井重里の「儲ける知性を休ませ、親切を」という記事を見つけた(この文章の最後にURLを貼り付けておきます)。その中で売上の7割が手帳であることに関して、「60万部以上売れるほど支持されているというのは、よっぽど良い手帳なんですね」というインタビュアーの質問に対して、
「自分たちが使いたいモノを作るというのが僕らの姿勢です。生意気な言い方をすれば、『良いに決まっている』というモノを出すようにしているので、それがよかったんだとおもいます」と答えている。
 一度でき上がってしまえば、手帳は翌年まで、車なら次のモデルが出るまでの一定期間、基本的にモノは変化しない。しかし、教育はそうではない。その時々で常に変化をする。質が下がるという危険性をはらんでいるものの、自分たちの振る舞い次第では、昨日よりも今日、今日よりも明日、質の高い授業を提供することが可能になる。夏期講習中は生徒も講師も曜日、時間が通常と違い不規則になるので、私としては質を少しでも上げるため例年のように生徒に対する講師の数に余裕を持たせた時間割を組んだ。きっと、それに満足していた自分がいたのだろう。ある日の授業が終わった後、「子供が『今日教えてもらった先生が分かりづらかった』と申しておりました」という報告を受けた。こういうのは言われてから対処しているようでは遅い。何も、この親御様がこれによってお子様をやめさせるとかそういうことではない。期待してくれているから、わざわざ言いづらいことを私に伝えてくれたのだ。改めて、本当に自分が受けたかった授業を行えているのか、我が子にどうしても受けさせたい授業になっているのかを厳しくチェックする必要がある。
https://news.yahoo.co.jp/feature/713

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