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2021.09.07Vol.510 夏の終わりに彼について書こう(後編)

 なぜテストから1か月近くもの期間を要したのか。それは、学校から書留で送られてきた成績表を彼が受け取ったまま知らせずにいたからだ。お母様は3人の子供たちに何度もそのことを尋ねたものの皆「知らない」と言い続けるので、学校に電話をした。「間違いなく届いています」との返答を受け、「そんなわけはない」と今度は郵便局に確認しに行く羽目に。そこにはちゃんとサインがされていた、もちろん彼の筆跡で。その事実を突きつけてもさらに1週間ほど白を切り通して、挙句「しゃあないな、じゃあ言うか」と訳の分からぬセリフを吐きながらようやく認めたとのこと。振り上げた拳の行き場に困ったのであろう。そのようなことも踏まえての「あれ、嘘が顔に張り付いちゃってますよ。テレビで見る、犯罪者の顔と同じです」だったのだ。「嘘を付くのは良くない」という正しいところからではなく、「嘘を付くのはめんどくさい」から始めてもいいのではないだろうか。そのうちに、嘘を付かない方が自分を守れるということに気付くはずである。
 話は期末試験後に移る。お母様とのラインのやり取りを不要なものを削った上でほぼそのままの形で再現する。ぐちゃぐちゃと書くよりそちらの方が伝わりやすいのと私が頭を使わなくて済むので。始まり始まり。
「今日、代数が返って来て、前回の9点から29点に上がったそうです。早速、ゲームを持って帰って来てと言われましたが、松蔭先生との約束やから、先生に報告して!と伝えました。すみませんがよろしくお願いします」
「上がったことは良いのですが、さすがに29点でゲームできるはず無いです」
「やっぱ、そうですよね。私も家で伝えますが、先生から本人に伝えてもらえますか?お願いします」
「既に授業を始めていますが、何も言ってきません。さすがにその点数で言ってこれないはずです」
「ですね。テストの内容見てもらえませんか?」
「本人が出してきたり、言い出してくるのをとりあえず待ちます」
「本人からは言わないと思います」
「それでは話になりません」
「ですよね。すみません。ゲームを先生に預けてると言ってしまっていて、、、」
「29点でゲームするぐらいなら学校をやめた方が良いです。3倍になったことをアピールしていますが、9点自体ありえないので、何の意味も無いです。一定以上の点数を取るか、それができないならゲームをしない、というのが普通の考えです。~さん、甘すぎです。あんな点数でゲームオーケーになるはずがありません」
「甘くなりそうなので、先生に頼ってしまっています。すみません」
「訳の分からない判断するより、私に任せていただいた方が良いです」
(中略)
「前にも言いましたが、(附属の)小学校に入れたときに何を望んでいたのかをよく思い出してください。もし、今みたいな成績を取ることが分かっていたとしたら、それでも入れましたか?要はそう言うことです」
「入れてません。やればできると信じてたんで」
「信じたことは間違いではありません。やってないからできてないだけなので」

 子供は、親が自分のために「すみません」、「お願いします」と誰かに頭を下げ続けてくれていることにいつ気づくのだろうか。こう書きながら、さて、自分にそんな瞬間があっただろうか、と振り返ってみても思い当たる節がない。仮にあったとしても、改まって「ありがとう」とは照れくさくてとてもではないが言えない。今、自分がしてもらったことを親として我が子にしている。それも1つの恩返しの仕方だと勝手な解釈をしている。
 さて、次は本人とのラインのやり取り編に移る。
「頑張ったかいあったやん。英語がひどいのでしょうが、夏休み、毎日20時から22時といった感じで、絶対時間を守るという約束であれば夜にゲームをしても良いと思います。ただ、その約束を少しでも破った場合は中2のうちはまったくできないものと思ってください。具体的にどうするのかを報告してください」
「20時から23時で良いですか?」
「本当は2時間と言いたいところです。3時間したいなら、2学期の数学の合計点が、平均点の合計より下回ったら2年生の間はゲームをしない、という条件付きでどうですか?それぐらいの意気込みがあっての1時間プラスだと思っています」
「分かりました。2学期中間平均点取ります」
「じゃあ、それでオーケーです。1秒でも超えたらアウトです。1つ間違えないで欲しいのは、ゲームのために勉強をするわけではないということです」
このやり取りの後にお母様に
「気づかなかった、とかすべてだめです。20時になったら(ゲーム機を)取りに来て、23時までに返す。5分前に終われば確実です」
とお伝えした。
 代数は29点だったのだが、幾何は平均点を超えた。数学で1教科でも平均点を答えたのは入学後初めてのことだったのだ。成績表をひた隠しにしていた彼が、嬉しくてわざわざ学校からそのことを伝えるためにお母様に電話をして来たとのこと。
 夏期講習中に5分ほど遅刻をし、かつ少し居眠りをしていた日はゲームをさせなかった。昨日も4分オーバーしたので今日から3日間は禁止にした。今の彼は、それを黙って受け入れられるようになった。そして、久しく見られなかった笑顔も取り戻しつつある。これからも我々の戦いは続く。その戦い、彼と私が対戦しているのか、それとも彼と私が、さらにはお母様なども含めて同じチームのメンバーとして共闘しているのか。どちらであるかは読者の想像に委ねることにする。

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