
2025.05.20Vol.686 何か新しいこと
これまでも何度かゴルフをご一緒させていただいている生徒のお父様と、先週は初めて2人でラウンドした。ビジネスでかなりの成功を収められているのだが、何か新しいことを始めるのは難しいという話をされておられた。
30歳を目前にして独立し、30代の10年間は志高塾の基礎を作って、40歳になったらまた何か新しいことを始めようと考えていたものの何もできずにもうすぐ48歳になる。「何かできたら良いな」という淡い期待に留まっていたことがその原因である。それでうまく行くほど世の中甘くはない。「新しい」というのは抽象的であるため、何をもってそのように言えるかに明確な基準は無い。ただ、子供が「俺(私)頑張っている」と嘘偽りなく心から思えれば、親を含め身近な人にもそう映るように、自分自身で「新しいことにチャレンジできてる」という確かな実感を持てるようにすることが一つの目標になる。
さすがにそろそろ動き出さないと、という焦りに背中を押され、中学受験がひと段落した1月末ぐらいからその第一歩としてセミナーに参加するようになった。それとは別に東京に行ったときに就活中の友人に会ったことがきっかけで、2026年の春に自由が丘に教室を出すことを決め、ここでもそのことを宣言した。だが、正直なところその気持ちは後退している。今、何をしようとしているのか。
1つ目は、これまでやってこなかった動画配信を始めるべく準備を進めている。それは2月末に梅田で行われた安藤忠雄のセミナーに足を運んだことがきっかけで、そのセミナーを主宰していた株式会社エックスラボ(https://xlab.co.jp/)の社長の藤さんと出会えたからである。この2か月ほど、1週間に1回の割合で、オンラインで1時間程度の打ち合わせを藤さんとマンツーマンで行っていて、毎回、1, 2時間で終わるような宿題が与えられる。明日の午前にも予定されているのだが、まだ手付かずである。構想は練っているので、この文章を書き上げた後に作業をして、明日早起きして最終の手直しをするという流れになる。具体的には、「なぜ、日本では算数、数学ができる奴が賢いと思われるのか」、「論理的思考力とはどのようなものであるか」の2点に関して、それぞれパワーポイントの1ページに収まるように資料を作成しないといけない。前者に関しては、昨年のGWに、かのアインシュタインも卒業したスイス連邦工科大学を訪れたときに女子学生の多さに驚かされたことを盛り込んだ上で話を展開して行こうと考えている。調べると、その大学では男女比が2対1なのだが、東大の理系の女子の割合はわずか10%前後である。数学のできるできないに性差なんてないと考えているのだが、先の数字が示すように、数学を勉強して来た日本人の女性が海外の先進国と比べて少ないことから、お母さんたちには「数学は難しい」というイメージが醸成され、中学受験のために通わせている進学塾から「算数で差が付く」と説明されると、「確かに」となり、「とにかく算数をさせなきゃ」という流れになっている、というのが私の見立てである。その結果、算数はどの中学受験生も大抵伸びる余地がないぐらい目一杯やっているのに、そこからさらにやろうとする。一方で、国語は「やっても上がらない」という思い込みから、伸び代がたくさんあるにも関わらず最低限の時間しか掛けない。特に中学受験では国語ができるようになるとかなり有利に進められる。それに関して、私は灘や甲陽の合格点を元にして説明することが多い。また、藤さんとやり取りを始めたことで、これまで忌避して来た「生徒の声」をHP上に載せることも決めた。受験での国語の重要性について述べたが、我々は受験のためだけにやっているわけではない。生徒を使って、「志高塾のおかげで~中学(もしくは高校、大学)に合格できました」という類の宣伝をすることが嫌いであり、そもそも、「合格させた」ではなく「合格した生徒が通っていた」という認識しかない。そういう諸々を加味して、大学生、もしくは社会人になった元生徒に顔写真と名前付きでコメントを寄せてもらうことにした。これまで5人から10人にお願いしたが、皆二つ返事で「良いですよ」と答えてくれる。受験についてさすがに簡単には触れてもらうものの、それ以上に志高塾でまなんだことが大学入学後どのように役立っているか、これからどのようなところに生きて行きそうかを語ってもらう予定にしている。そのうちの一人である京大医学部5回生の男の子と、今年同じく京大医学部に入学した1回生の元生徒と3人で、先週の火曜に京都で夜ご飯を食べた。前回ブログをアップするのが早かったのは、久しぶりに京都に行くので、彼らに会う前に寺社仏閣巡りをしたかったためである。その5回生の彼が、「先生、ずっと同じことやってたら飽きません?僕も研修を終えて、医者として20年やったら50歳前で、そのときにそれをただ続けているだけというは何か面白くない気がしてるんです」という話をしていた。実際、彼は3つのことにエネルギーの注ぐと全部が中途半端になってしまい、かと言って医学の勉強だけしているというのも違うということで、AIについて学ぶべくベンチャー企業でインターンを始めたとのことであった。また、前回私が紹介した『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』をちょうど読んでいるところだったのだ。それが嬉しくて、「ほらっ」とその日アップした私のブログを読んでもらった。彼の「飽きません?」というのは、同じことをやってそれなりに評価されても、きっと新しいことにチャレンジしていない自分に満足できないですよね?ということを、50歳を前にした私に聞きたかったのであろう。年長を対象にした読み聞かせクラスを作ろうとしていることや、オンラインに力を入れるべく、シンガポールで日本人向けに情報誌を発行している編集長の方と打ち合わせをしていることなど具体的な話をいくつかした。
一つ一つのことはそれほど目新しいとは言えないかもしれないが、これまでとは違いいろいろなことに手を付け始めているのは間違いない。その結果、日々の時間の使い方は大きく変化している。おそらく1年後ぐらいにまた3人で会う。そのときに面白い話ができる人になっていたい。