
2017.07.11Vol.309 「何」を「どのように」
7月2日のヤフーニュースからの引用。
羽生三冠を最も近くで見ている理恵夫人は、6月17日にこうつぶやいている。
≪おはようございます。寒い朝です。毎朝の切り抜き日課、天声人語で幼児教育の大切さが記載≫
この日の天声人語は学校に入る前の幼児教育の及ぼす影響について書かれている。『幼児教育の経済学』の著者で米シカゴ大学のヘックマン教授は「幼児教育は学力だけでなく、根気強さや注意深さ、意欲などの『非認知能力』を育むのが大切だ」と語る。
≪将棋が注目され天才の育て方について私まで質問されるこの頃。善治先生が小さい頃何をしていたか? それが、藤井聡太先生の親御さんのインタビューと義父母の話が世代違いでも重なる部分も多く興味深い≫
羽生三冠の母・ハツさんはかつて「楽しそうに将棋をしている姿を見るのが、私はとても好きでしたので、ただただ、子どもを見守っていました」と新聞のインタビューで自身の子育てについて答えた。
一方、藤井四段も家庭では好きなことを自由に、そして “モンテッソーリ教育”というシステムを取り入れた幼稚園では自主性を育んだ。
スポーツ紙記者によれば、藤井四段は「3歳のときに買ってもらったキュブロという積み木で何度も繰り返し遊んでいたそうです。それからも、一度夢中になったら気がすむまで集中している」のだという。
どこから話を進めていこうか。モンテッソーリ教育に関しては、長男の幼稚園選びのときに少し調べ、バス通園できるところがあったので、妻に見学に行ってもらった。「女の子が多かった(確か7割ぐらい)のと、かなり静かだった」という感想を聞いて選択肢から外した。最終的には、園庭が広く、ひらがなやカタカナはもちろんのこと、絵の描き方なども教えないところを選んだ。近所のある幼稚園に通う子供たちはある程度うまく描けるらしいのだが、みんな似通っている、という話を聞いて、そういうところは絶対に嫌だ、となった。
ヘックマン教授が「幼児教育は学力だけでなく、根気強さや注意深さ、意欲などの『非認知能力』を育むのが大切だ」と語っているが、私の感覚からすると、「非認知能力」を育むことをあきらめるのと引き換えに、子供に「学力」を手に入れさせようとする親が多い。当人たちにはそのことに気づいていないのだが。なぜそのようになるのかと言うと、やらせたことが大したプラスにならないとしても少なくともゼロよりはましだという考えが根底にあるからだ。でも、実際はマイナスに働くことも少なくない。分かりやすく言うと、勉強嫌いになるのだ。私は、勉強好きになって欲しいとは思わないが、考えるのは好きであって欲しい。勉強嫌いでも考えるのは好きな人はいるが、それとセットで考えることまで嫌いになるのは不幸極まりない。また、数値化できない「非認知能力」などそのような親にとっては信用に足らないのだ。
上で挙げられている「根気強さ」などに加え、我々は「失敗恐れなさ(少々強引な表現だが)」も子供を評価する尺度の1つだ。失敗を嫌がる子供には、まず、それには2種類あることを伝える。チャレンジした結果のものなのか、不注意によるものなのか。思い切って取り組めるようにすることが目的なのだが、そのためにはなぜそのようになっているのかを探る必要がある。早期教育か、家庭での親の声掛けかが原因かなど。先天的な性格というのも無関係ではないが、後天的な要素の方が間違いなく強く影響している。それゆえ、適切な手を打てば改善できるのだ。
そもそも、この記事を選んだのは「キュブロ(名前を今回初めて知った)」が売れているというのを少し前に聞いて違和感を覚えていたからだ。「何」というのはそこまで重要ではなく、「どのように」こそが肝心なのだ。このおもちゃを買った2, 3歳の子を持つ親が「くもんのプリントが終わったから、次は15分間集中してキュブロをやりなさい。その後はバイオリンの練習をやろうね」などと言っていないことを願うばかりである。
ちなみに、上の記事は次のように締められている。
子どもが楽しんでいるものを、ただ見守ってあげるというのは、簡単なようでなかなか難しい。天才を育てる一歩はまずはシンプル・イズ・ベストから?