志高塾

志高塾について
志高塾の教え方
オンライン授業
読み聞かせクラス
卒業生・卒業講師の声
受験結果
志高く
志同く
採用情報
よくあるご質問
お問い合わせ
体験授業申込 カレンダー
志同く

2026.09.11Vol.100 思い立たずは凶の今日(三浦)

 いつも、家から小一時間ほどかかる美容院に通っている。大学の最寄りにある美容院で、何かの技術が特別だというわけではないのだが(おそらく)、良い意味での惰性というか習慣で、十年近くの付き合いになる。きっかけは大学在学中、人生でほとんど初めて「思い立ったが吉日」を実行したことだ。
思い立ったが吉日。それ以外は全て凶、というのは何かで見た漫画の台詞だったかもしれないが、この「吉日」とは、行動における良い言い訳になる。
それまで私は家から徒歩十五分圏内の美容院に通い続けており、美容院の質というものに頓着したことがない。基準は気楽に過ごせるかどうか、それだけ。だから慣れた場所の方が良く、美容院を変えることもほとんどなかった。ただ、その日はなんとなく、「髪を染めてみたいな」と思った。きっかけが明確に何かあったわけでもないし、そういった欲求が常にあったわけでもない。本当にふと、染めたらどうなるだろう、と思い立っただけだ。
 普段であれば、思い立ったところで終わって、なあなあにしている。しかし、そこで他の美容院を探すでも、いつもの場所を予約するでもなく、講義の後にそのまま足が見知らぬ店に向いた。入った時、やんわりと「今日は偶然空いていたからいいけど、予約はしてくださいね」と言われたことを鮮明に覚えている。何色にしたいかも具体的に考えていなくて、全部おまかせにしたら、あまり目に見えての変化がなくてほんの少し肩透かしを食らった気がした。けれど、それから十年近くの付き合いになる。いつも予約画面が結構埋まっていて、「あの日は本当に偶然空いていたんだな」「申し訳ないことをしたな」としみじみ思う。
 そんなことを、この間、その美容院で髪を切ってもらいながら考えていた。従業員の顔ぶれが変わっていくほど、長い付き合いになった。
 志高塾の夏期講習期間、最終週の後半は連休になる。昨年はその二週間ほど前に、ふと「青森に行こう」と思い立った。青森は斜陽館などの記念館の関係でいつか行きたいと思い続けている場所で、けれども飛行機に対する腰が重く、なかなか踏ん切りがつかなかった。行きたい理由より、行けない理由を探すほうが早かった。しかし、八月末という猛暑の中、旅行先に選ぶならせめて涼しい場所が良いという極めて重要な条件を考えたとき、ようやく自然と候補に挙がった。そして初めて、青森に「行こう」と思った帰り道に旅程を調べた。弾丸旅行にはなるが一泊二日で目的地は回りきれそうなことがわかり、ChatGPTと相談する形で、その日のうちにある程度旅程を組んだ。しかしいざ飛行機を取ろうと思ったところ、ChatGPTが提示していた値よりも随分と高い数字が提示され、その値段に驚いてやめてしまった。そこで思いきれなかったことで、青森はかなり遠ざかったといえる。次に「思い立つ」日を待つばかりだ。せっかく青森に行くなら冬場がいいかもしれない。
 昨年は結果的に、城崎と倉敷で悩んで城崎にした。城崎の詳細な旅行記はすでに題材にしているので割愛するが、当時の私は温泉にまったく興味がなく、ただ「温泉街の雰囲気がよさそう」「それなりに近いし、午後から行って日が暮れてから歩き回れるだろう」というだけの理由で選んだ。しかしその旅でまんまと温泉というものにハマり、その後有馬温泉にも行くようになり、なんと今年の夏期講習も城崎に向かった。その際には昨年の「外湯巡り」で唯一入れなかった外湯にも訪れることができ、長期の改装中である一つを除けば、ひとまずコンプリートした形になる。
 基本的に無計画なので、思い付きで行動すると失敗することがほとんどだ。旅先ではじめて定休日に気付くとか、目的地までの移動方法がわからずに立ち往生するとか、無計画というよりは準備不足なことが多い。今年はその反省を生かして、以前はタイミングが合わずに寄れなかった飲食店三店ほどにも立ち寄ることができ、断念していた城崎マリンワールドにまで足を延ばせた。やりたいことは大抵叶ったが、それでも来年も足を運ぶのかもしれない。美容院のような、もはや「習慣」として。
 ある日思い立ったことが、思いのほか続いていくことがある。そうやってきっかけを多く持っている人を、「行動力がある」と評するのだろう。思い立ったが吉日。マリンワールドでは、釣り堀のようなコーナーがあったので、一人で人生初のアジ釣りをした。これは習慣にならない気もするが、挑戦のハードルは日々下がりつつある、のかもしれない。

PAGE TOP