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2019.08.06Vol.409 丁寧な取り組み

 自習中の私立に通う中1の女の子から「先生、このプリントなんですけど、どのようにやっていけばいいですか?」と質問された。そこには英単語が縦に並んでいて、それぞれの単語の横にマスが6つずつ用意されていた。それぞれ6回ずつ練習しなさい、ということである。おそろしいことに、同じプリントがもう1枚配られていた。同じ単語を12回も書かないといけないのだ。彼女は、縦に1回ずつ違う単語を書いて覚えて行くのがいいのか、それとも同じものを横に6回続けるのがいいのか、ということを聞きたかったのだ。もし、お子様から同じような質問をされたらどのように答えますか?少し考えてみてください。
 私は、できるだけ学校の先生の悪口は言わないようにしているが、これに関しては「ひどいな」と率直な意見を述べた。その先生曰く、「書かずに覚えられる人はいない」とのこと。何を根拠にそんなことを言っているのかまったく持って不明である。最近ブログで触れた気もするが(途中書いていたものの削除したような気もする)、私は高校時代、英単語はすべて見て覚えた。長文の中で出てきた知らないものは単語カードに書き出したが、それも見て覚えるためであった。
 「何を根拠に」ということで言えば、数か月前にあるお母様から「先生、この本面白いですよ」と『「学力」の経済学』という本を勧められお借りした。そこには、世の中で話題に上る教育にまつわる事柄(ゲームが子供の学力に悪影響を与えるか、少人数学級の方が学力は伸びるか、など)の正否がデータに基づいて検証されていた。タイトルに「経済学」という言葉が含まれているように、それを踏まえて教育に関して、国はどのようなところに税金を投下すべきか、親がどのようなタイミングでどのような習い事を子供にさせたらコストパフォーマンスが上がるか、ということなどが語られていた。読了するまでドキドキであった。「私がこのブログなどで主張していることが、間違いだらけだったらどうしよう」というのがあったからだ。どうにかそれは免れることができたので、今後も好き勝手なこと発言をしていく所存である。「国語塾に通わせるのはお金をドブに捨てるようなものである」ということが述べられていなかったことも付記しておく。
 個別に習い事の相談を受けることもある。「先生、ロボットプログラミングってどう思われますか?」というのもその1つである。それには基本的に反対である。それっぽいことをして、すぐに身につくようなプレゼンテーションをさせて、それを見た親を少し喜ばせて終わりだからである。基本的に、としているのでもちろん例外はある。教室だけで終わらせずに、家に帰ってから子供自らそこで習ったことを発展させるなどのことをしているのであれば悪くはない。反対する理由として、いい加減な先生が多いことが挙げられる。プログラミングに関する知識を有しておらず、ただマニュアル通りに教えているだけの人が少なくないのだ。今もプログラミングの仕事をしながら、東京で子供向けのスクールを経営している友人がいる。彼はエキスパートなわけだが、この春に会った時、素人がやっている教室との差別化って難しいな(それを世の中の人に認知してもらうという意味で)、という話をした。その彼が確かブログで、プログラミングは目的ではなくて、それを通して何を学ばせてあげられるか(物を作り上げていくプロセス、プログラミングでどのようなことができるかを知ること、など)が大事、というようなことを語っていた気がする。
 さて、冒頭の質問に対する私の答え。その単語を覚えるのに必要なだけ書いて、次に行きなさい、というアドバイスをした。どのようなものが列挙されていたかはよく見ていないのでほとんど掴んでいないのだが、たとえば”beautiful”はややこしいから5回、”summer”は”m”が2つ続いていることを頭に入れるために3回書いて、”cap”や”hat”(この2つはそこに含まれていて、「なんで、こんな単語を書いて覚えなアカンねん」と突っ込んだので記憶している)は1度も書かない、などの区別をしなさい、ということである。そうすると、12回に対してそれぞれ7回、9回、12回の残るわけだが、それは単なる作業として、何も考えずに書いておけばいい、と付け加えた。もし、生真面目に12回書いて覚えられなければ、「12回でダメだったから、これからはすべて15回にしよう」という訳の分からない方向に行きかねない。こういうものに対して、12回、きれいな字で書くのが「丁寧な取り組み」という人がいるがそれは違う。何のためにそれをするのか、という目的を明確に意識した上で、工夫をしながら進めていくことこそが「丁寧な取り組み」なのだ。私の役割は、ベターな方策を提案することである。それも参考にしながら、子供達が各々のベストなやり方を作り上げて行くことを強く望んでいる。

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