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2024.01.12Vol.11 ゴールのない道(三浦)

 受験直前。本来であればそれをテーマに話をしたいところなのだが、思いのほか余裕がないので、以前に書きかけていた内容を活用させてもらうことにする。
 少し前に読んだ本の話である。
 日々過ごす中、自分の数字への弱さに辟易すると同時に理系への憧れが増していき、本を読むのが手っ取り早いなと、本屋で偶然見かけた『ウォール街の物理学者』というハヤカワ・ノンフィクションに手を出した。めちゃくちゃに面白かった。細かな内容は忘れているので(覚え違いをしている可能性もあるので)、正確な情報が必要であればぜひ読んでほしい。
 ざっくりと言えば、クオンツと呼ばれる、数学的手法を用いる金融の人々に関するものである。物理学者たちが金融の数値変化にパターン、つまりはモデルを見出し、それに伴って様々な予想を立てられるようになったという歴史をさながら伝記のように辿っていく。数字に強くなろうと思って読み始めたにも関わらず、実際にグラフや理論が出てくると驚くほど全然頭に入ってこなかったのだが、興味深く読めたのはその根底に流れる歴史、そして「研究者の姿勢」ゆえ……だったのかもしれない。
 物理学者たちは仮説を立てる。その実証を行いながら、モデル化できていないところへの改善を重ねていく。つまりモデルはアップデートすることが前提にある。しかし金融界はそのことを知らないまま、あるいは見て見ぬふりをしたまま、まるで盲信するかのごとく古いモデルを使い続けるから、結果的には金融危機のような崩壊に直面するのだ、と筆者は述べている。急激な暴落を予測することは不可能だと言われているのは、単にアップデートが行われていないからだ、と。
 そういったプロセスも興味深くはあったのだが、なにより惹かれたのは、ずば抜けた才覚を持つ研究者たちが、分野の垣根を越えて研究を重ねていたことである。
 ルーレットを当てるために物理法則を用いて計算を行う、というのも面白いものだが、例えば大暴落を予知した研究者については、「大きな崩壊の直前にはあらゆることに共通のパターンがある」として、大地震の予知も行っている。しかもその発端は、宇宙船に使うタンクがどれだけの負荷に耐えられるかを検証したことにあった。
 閑話休題。占いを押し付けるつもりは全くないことをご了承いただいた上での話になる。他人を当てはめることは滅多にないが、自身の紹介として、ふたご座のO型という事実以上に簡素なものはない。性格占いで言われているだいたいのこと、つまりは「飽きっぽく、ひとつのことが長続きしない」が該当しているからだ。さて、そんな私にとっては、この本に出てきた物理学者のように「複数の物事に興味を持ち、共通点を見出し、新しいものを生み出す」ことは、その欠点を最大限有効活用した形として、理想のように映る。
 以上、感想文の再利用である。金融モデルというとどうしても実利的なイメージが先立つが、本書を読んでいるときには、研究者たちはそのためだけではなく、好奇心のもとで研究を行っていることが伝わってきていた。ありきたりな言葉に任せれば、だからこそ結果に繋がったのだろうとも思うし、それは素敵なことだとも思う。
 しかし、それはある一定の知識があって初めてたどり着く段階であることも事実である。それでもどうか、その道中を、学びを蓄積していく階段を、ひとつひとつ登っていく力が備わってほしい。そして辿り着いたところで、「他にも面白いものがあるな」と周囲を見回すような、そんな視野を身に着けてほしい。
 完璧なモデルがないように、道が一つに限らないように、明確なゴールはない。目に見えるひとつの「ゴール」とされがちな受験に思いを馳せながら、いろいろと考えだけを巡らせている。

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