
2025.09.09Vol.702 三方良し
「三方良し」とは、近江商人の経営哲学であり、「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方である。今回、何を書くかはおおよそ決まってはいたもののまだ一文字も書いていない状況でタイトルについて考えていて、思い浮かんだのがこれである。そして、それと同時に、欧米的な「ウィンウィン」より、この日本的な「三方良し」の方が優れているな、という当たり前のことに今更ながら気が付いた。
さて、一昨日の日曜、現在大学1回生の元生徒とお母様の3人でランチをした。「先生、ご馳走しますよ」とお声掛けいただいたので、二つ返事でノコノコと出掛けて行き、好きなものを好きなだけ注文させていただき、ガブガブ飲んで、パクパク食べた。「厚かましい」の一言に尽きるのだが、そのような場で時々「遠慮がないところが気持ち良い」などと言われてしまうものだから一向に改まる気配が無い。10代や20代ならいざ知らず、この歳になってそれで良いのだろうか。少し反省するそぶりを見せてはみたものの、数か月前にも小2の頃から通ってくれている現在高3の生徒のお母様が、「卒業したらこの半年に1回の先生との面談が無くなるのが寂しいです」とおっしゃるので、「じゃあ、少なくとも1年に1回のペースでおいしいご飯に連れて行ってもらうしかないですね」と軽口を叩いたら、「先生、是非行きましょう!」となった。社交辞令を言うお母様ではないので、十中八九この計画は実行される。
今回のランチの目的は、彼の近況と、未来のざっくりとした展望を聞くことであった。上で述べたようにお酒を飲みながらなので、かしこまった雰囲気ではない。それに加えて、私はその後阪神の優勝を見届けるために甲子園に行くことになっており、Tシャツに半パン、サンダルといったいでたちだったため、真剣な話をしたところで説得力はない。近々「卒業生の声」に載せる予定であるが、ひとまずここでは名前は伏せておく。T君は、甲陽学院から一浪して九州工業大学に進んだ。個人的な意見を述べると、九州工業大学は「良い大学」ではない。意図的に鍵かっこを付けた。誰にとっても良い大学というのは存在しない。よって、九州工業大学が、「良い大学」になる場合もあればそうでない場合もある。誤解を与えないために、このことについてもう少し詳しく説明した方が良い気はするが今回は割愛する。
大学に入ってからこれまでのことを尋ねると、「一人暮らしが楽しいです」と返ってきた。それ自体は何ら悪いことではない。親のありがたみも身に染みているはずである。ただ、それ以外のことで特段何も語る材料を持っていなかった。そこで、会う前から伝えようとしていた2つのことについて話した。徹底的に読書をすること、AIに触れること。本人にその気が無いわけではないのだが、それ以上にお母様が望んでいる気がするのは3回生からの他大学への編入である。それを踏まえた上で、次のような意見を述べた。
編入するかどうかは一旦横に置いておいて、まずはもっといろいろなことを知らなアカン。医者になりたい、弁護士になりたい、ということは誰にでも言えるし、それにある程度説得力のある理由を添えることも難しいことではない。世の中には楽しいことがいっぱいあって、自分がなりたいと選択したもの以外にも、3つ、もしくは5つと興味のあるものがあって、それらについてよく理解した上で、自分のやりたいことについて語れるのであれば、それには価値がある。今は、全然その状態ではないから、まずは視野を広げる必要がる。あっ、そや、読書以外にもオンラインセミナーに出たらええねん。今どき無料のやつなんていくらでもあるから。せっかくなら目標があった方がええわな。よし、じゃあ半年間毎週1回なんでも良いから、参加して、それについて800字以上のレポートを俺に送ってきて。ちょうど、志高塾はインスタを始めようとしてるから、10月から半年間連載枠作るわ。こういうのって、一人じゃ頑張るの難しいから。T君のためになるし、志高塾のためにもなるし。それだけじゃなく、読んでくださるのは大抵お母様たちやから、「こういうセミナーを自分の子供にも受けさせたい」、「いつか、自分の子供にもT君のように連載させたい」と思ってもらえるかもしれへんし、そう思ってもらえるようなものにせなアカン。とりあえず、今日中にまずは1回目に参加するものを決めて、俺にラインして来て。初回やからレポート作成の時間は少し長めにとって15日(月)でええわ。そもそも今週中に「卒業生の声」の原稿をあげてもらわなアカンし。9月は準備期間として、毎週月曜15日、22日、29日までに提出してもらって、本格稼働は10月からで一発目は10月6日。毎週火曜にインスタに上げて、それ以外にもブログにURLを貼り付けても良いかもしれん。もしかしたら、途中でこれを続けて意味があるんかな?ってなるときが来るかもしれへんけど、価値のあるなしなんて考えんとまずは半年やってみ。そしたら、半年後に成長して、言うことが変わってるはずやから。
一方的に話し続けているスタイルを取ったが、実際のところは、レポートを書く余裕がある曜日がいつであるかとか、どれぐらいのペースならできるかとか、を確かめながら、また、自分の経験などを交えながらそれをやることの意義を伝えていた。
もう一度断っておくと、ラフな格好で、グラスに片手に、である。最後は、グラスが、プリンとコーヒーに代わっていたが。