志高塾

志高塾について
志高塾とは
代表挨拶
通塾基本情報
アクセス
お問い合わせ
志高塾の教え方
指導方法
志高塾の作文
志高塾の添削
読解問題の教え方
使用教材と進め方
志高塾の教え方
志高く
志同く
採用情報
お知らせ
志高く

2018.10.16Vol.370 そこから分かること

 時事ドットコムニュース10月7日版に掲載されていた「運動すれば『諦めない子』に?」が“いい”題材になりそうだったので、ここで紹介する。なお、①~⑥の段落番号は、その後の説明のために私の方で挿入した。

①2017年度の体力・運動能力調査では、12~19歳について、達成意欲と運動習慣、体力との関係を分析した。その結果、運動する頻度が高いほど、最後まで物事を諦めず、やり遂げる気持ちが強い傾向にあることが分かった。
②「何でも最後までやり遂げたいと思うか」の問いに対し、週に3日以上運動する15歳の男子の46.7%、女子は49.9%が「とてもそう思う」と回答した。一方、まったく運動しない男子は23.1%、女子が21.1%と低かった。
③体力との関係では、「とてもそう思う」と答えた15歳男子の新体力テストの合計点は52.8点、女子は53.1点で、最も高かった。18歳の男女でも同様の傾向がみられた。
④スポーツ庁は「子どもを持つ親にとっては関心が高いので、スポーツとやり遂げたいと思う気持ちに関係があることを示したかった」と話す。
⑤小学生に対する入学前の外遊びと体力などの関係も調査。入学前に外遊びを週6日以上していた10歳男子のテスト合計点は58.6点で、週1日以下の男子より6点高かった。10歳女子も同様に約6点高かった。
⑥また、10歳の男女は入学前に外遊びの回数が多いほど、現在も運動する頻度が高かった。同庁は「幼児期の外遊びの習慣の大切さが出ている」としている。

 先日、中1の生徒の親御様から国際バカロレアに関することで相談を受けた。かいつまんで説明すると、国際バカロレア機構が発行する国際バカロレアの修了資格が得られると海外の大学を受験する上で有利になる。そのお母様曰く、ほとんどの教科で文章を書くこと(もちろん、英語で)が求められる、とのこと。時々このような、志高塾にそれに関する実績があるわけでもなく、もっと言えば私自身にほとんど知識すらないことにおいて「志高塾で対応して欲しい」とお願いされると嬉しくなる。念のために断っておくと、我々は日本語で論理的に文章を書く訓練することを求められている。「先生、この件で実績がありますか?」、「先生、このことに詳しいですか?」というような質問をされることはほとんどない。バカロレアはそれなりに知られたものなので、その対策を売りにしている教育機関などもあるはずなのだが、我々に頼っていただけるのだ。
 上のような対策を伴うこと以外にも、たとえば、京都大学が高校1, 2年生を対象に行っているELCAS(エルキャス)という体験型学習の講座に関して「先生、どう思いますか?」と夏休みの前ぐらいに尋ねられた。このような場合、調べて、自分なりの結論と、そのように考える理由を添えて回答するように心がけている。
 親御様にお願いされることと、冒頭の記事がどのように関係するのかと言うと、私は日々、日々というとかなり大げさであるが、何かしらの情報に触れると、その意味するところを考えるようにしていて、それが見解を述べる上で役立つのだ。そのような作業は仕事上必要であるとも言えるし、別に仕事のためというわけでもなく、どちらかと言うと昔から自然とそのようなことを考えてきたような気がする。
 まず、①段落。気持ち悪いのは12歳から19歳という年齢である。おそらく中1から高3までが対象であったのだろうが、1年留年している人がいて、12歳から18歳ではなく、19歳まで含まれたのであろう。
 そして、②段落。数字の意味を考える上で最も重要なのがここである。男女ともに、週3日以上運動する子は、まったく運動しない子の約2倍になっている。これだけ見ると「やっぱり運動は大事だな」となるのだが、なぜか比較しているのが、「週1, 2日運動している子」ではなく「まったく運動しない子」なのだ。インパクトを出すために大きな差が出るグループと比較しているのだ。もし、男女ともに「とてもそう思う」と答えたのが80%ぐらいだと運動と諦めないこととの結びつきは強いと言えるのだが、実際は50%を切っているので、その相関は弱い。
 ③段落のデータからはほとんど何も読み取れない。「とてもそう思う」の次のレベルが仮に「まあまあそう思う」だったとして、彼らの得点が提示されていないからだ。そのことから、それほど大きな差がなかったと推測される。また、15歳と18歳でそのような傾向が見られたというのは、それぞれ高校、大学受験を控えていて、1, 2年生よりは目標を達成することに対する意欲が高まっていることが関係しているように思う。
 ⑤, ⑥段落は当たり前すぎる。入学前にゲームばかりしていた子供が小学生になって外遊びが急に増えるとは思えない。しかも、⑥ではなぜか数字ではなく「頻度が高い」などという抽象的な表現にとどまっている。そして、外で遊ぶ機会が多ければ、体力テストでいい点数が出るのはある種当然のことである。
 いろいろと数字の後ろに隠れていることを指摘してきたが、この記事は非常に良心的である。④段落で種明かしをしてくれているからだ。「スポーツとやり遂げたいと思う気持ちに関係があることを示したかった」と、そういう風になるようにデータの見せ方を工夫しました、ということを明らかにしてくれているのだ。担当しているのがスポーツ庁なので、さもありなん、といった感じである。
 先の記事に対する私なりの読み取り方を紹介してきた。それが正しいかは分からないが、それほど大きくは外していないはずだ。こういうものは、一度考えて終わりではなく、そのときそのときで整理しながら自分の中にため込んでいく。そして、それに関連する新たな情報が得られたら、少しずつ修正して行くということを繰り返す。それによって、親御様が何かしらの判断をする上で、少しでもお役に立てるのであれば幸いである。

PAGE TOP