「中学受験は算数勝負」
中学受験について情報を集めていると、このような話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
特に、難関校として知られる灘中学校(以下、「灘中」)の算数は難しく、合格者と受験者の平均点にも大きな差があります。そのため、灘中を目指す中学受験生の場合、算数対策に多くの時間を使うこと自体は珍しくありません。
一方で、「算数で差がつく=国語はそれほど重要ではない」と考えるのは危険です。
この記事では、灘中入試において合格者を複数人輩出してきた志高塾が、2026年度までの入試データをもとに、国語が合否にどのような影響を与えるのかを解説します。
出題傾向や学年別の対策方法にも触れていくので、ぜひ参考にしてください。
データで見る「灘中入試と国語」のリアル

灘中の入試は国語200点・算数200点・理科100点の500点満点。国語は算数と同じ200点を占めます。
そして、国語は算数ほど受験者間の点差が大きくないからこそ、安定して合格者平均を上回る力を持っていれば、算数の出来が思うようにいかなかった年にも合格を支える重要な科目になります。
早速、灘中が公表している2022~2026年度の入試結果をもとに、国語の得点を安定させることの重要性を把握していきましょう。
算数は国語よりも大きく点差が開いている
まず直近5年間の各科目の最高点を見ると、国語の最高点は200点満点中、155~170点。一方、算数は200点満点中191~196点です。
この5年間の最高点を満点に対する割合で平均すると、
国語:約81.7%
算数:約97.1%
となります。
つまり、算数ではほぼ満点に近い点数を取る受験生がいてもそれほど珍しくはない一方、国語で満点に近い点数を取ることは容易ではありません。
さらに、各年度の「最高点-合格者平均点」を計算すると、直近5年間の平均は、
国語:約35.2点差
算数:約56.2点差
となり、算数のほうが合格者のなかでも明らかに点数の幅が大きいことが分かります。
合格者平均と受験者平均の差も算数のほうが大きい
そして、さらに重要なのが、合格者平均と受験者平均の差です。
たとえば2026年度は、
国語:受験者平均118.6点/合格者平均129.4点
算数:受験者平均98.6点/合格者平均123.8点
でした。両者の点差は、国語が10.8点なのに対し、算数は25.2点となり、この数字だけを見れば、「やはり灘中は算数ができるか否かで差がつく」という結論になります。
ただし、ここで「だから国語は最低限でよい」と結論づけるのは少し注意しなければなりません。見るべきなのは「どの科目が最も点差を生むか」ではなく、「合格に必要な500点を、どのように安定して積み上げるか」だからです。
その視点に立つと、国語の違った価値が見えてきます。
志高塾の灘中合格実績から考える「国語で合格者平均+10点」がもたらす影響力

当塾(志高塾)では、2008〜2026年度の累計で、灘中を受験した12名のうち8名が合格しました。合格率に換算すると約66.7%となり、これは灘中の受験者全体の合格率の1.8倍です。
もちろん当塾の受験者は累計12名と多くはありませんが、3分の2が合格に至っているという点は一つの参考材料になるでしょう。
特に「算数で合格者平均を取れなかったら厳しいのではないか」という懸念がある方は、国語で安定して高得点が取れた場合に見えてくる可能性を知っておいて損はないはずです。
算数・理科が受験者平均でも国語次第で合格最低点に届く
ではここからは、一つのシミュレーションをしてみましょう。具体的には、2022~2026年度の入試結果に関して、以下の得点の合計点を、合格者最低点と比較します。
国語=その年の合格者平均+10点
算数=その年の受験者平均
理科=その年の受験者平均
比較した結果は、次のとおりです。
| 年度 | 仮想合計点 | 合格者最低点 | 差 |
| 2022 | 305.4点 | 297点 | +8.4点 |
| 2023 | 316.9点 | 316点 | +0.9点 |
| 2024 | 333.8点 | 330点 | +3.8点 |
| 2025 | 322.7点 | 324点 | -1.3点 |
| 2026 | 302.1点 | 295点 | +7.1点 |
もちろん、これは仮想的な計算であり、「実際にこの点数を取れば合格できる」という意味ではありませんが、各科目このような結果が出れば合格者最低点を上回る年がほとんどで、唯一届かなかった2025年度も約1.3点差です。
言い換えるならば、国語で合格者平均より10点上積みできれば、算数や理科で圧倒的な点数を取れなかったときにも、総合点で十分に勝負できるといえます。
「差がつきにくいから捨てる」ではなく「支えになる教科にする」
国語は、算数と比べれば受験者のなかで圧倒的な差をつけにくい科目です。しかし、ここで認識してもらいたいのは「国語を安定した得点源にすれば、総合点の下支えになりうる」ということです。
灘中のような最難関校を受験する子でも、本番の算数で普段通りの力を発揮できるとは限りません。灘中入試の算数は、1日目と2日目で受験生にかかる心理的な負荷が異なるからです。
1日目の算数は、限られた時間の中で次々と問題を処理していく必要があります。そのため、序盤の一問でつまずいたり、思うように手が動かなかったりすると、「まずい」「時間が足りない」と焦りが生まれやすく、その焦りが次の問題にも影響することがあります。
さらに灘中を目指す子の多くは「算数で点数を稼がなければならない」という意識を強く持っているため、1日目の算数で手応えを感じられなかった場合、「算数で取るはずだったのに」「これでは合格できないかもしれない」と、必要以上に気持ちが沈んでしまうことがあります。
2日目の算数は、1日目と比べれば一問一問に向き合いやすい試験ではありますが、前日の失敗を引きずったままでは、本来の力を十分に発揮できません。
そこで大きな意味を持つのが、国語です。国語に安定した力があり、「算数が多少崩れても、国語でしっかり取れる」という感覚を持てていれば、1日目の算数でつまずいたとしても、マイナスを相殺できる見込みがあります。
つまり、どのような問題が出ても一定水準以上を取れる「本質的な国語力」を身につけることが、難関校の入試では鍵になるのです。
灘中国語の出題傾向と対策のポイント

灘中の入試は2日間にわたって行われ、国語は1日目が80点、2日目が120点の合計200点です。
1日目は語彙・漢字・俳句など幅広い言語知識が問われ、2日目は文章読解と詩を中心に、記述力や思考力が問われる構成が基本となっています。
ここからは、その「国語1」と「国語2」で必要になる力に関して、詳しく解説していきます。
【国語1】語彙を「知っている」だけではなく自在に使える力が必要
1日目の国語1では、漢字や語句、慣用表現、俳句、外来語など、幅広い言語知識が問われます。2026年度にも、四字熟語、かなづかい、ことわざなどが出題されました。
こうした問題を見ると、「過去問にある語彙をひたすら暗記すればよい」と考えたくなるかもしれませんが、ただその単語の意味を知っているだけでは不十分かもしれません。
志高塾では「語彙」は、知っている言葉ではなく、書いたり話したりできる、つまり自分で使える言葉を意味します。
たとえば、「抽象」という言葉を挙げるなら、辞書に載っている意味を覚えているだけではなく、「抽象と反対の意味の言葉は何なのか」「自分ならこの言葉をどう使うのか」まで考えることで「使いこなせる言葉」にしていきます。
このように言葉と付きあっていくことで、自分にとって身近な語句や漢字が増え、たとえ未知の語句が登場しても、知っている言葉から推測できるようになるからです。
【国語2】「本文にある答えを探す」だけでは対応できない
2日目の国語2では、文章題や詩が中心となり、記述問題が多く出題されます。
2026年度は、論説文・随筆文・詩という構成でした。それぞれ文章中の根拠を押さえたうえで、自分の言葉を補ったり、内容を抽象化したりして答案を作る力が必要になります。
ここで必要なのは、本文中から「答えっぽい一文を早く探し出す力」ではありません。
まず文章全体を理解し、
- 何を聞かれているのか
- どこが答えの根拠になるのか
- 複数の情報をどのようにまとめるのか
を自分で考える必要があります。
それができるようになるには、日頃から答えそのものより「どう考えたのか」を突き詰める時間が必要です。正解していても理由を説明できなければ、次に違う文章が出たとき再現できない可能性があります。
反対に、誤答であっても根拠を持って考え、どこで判断を誤ったのかを説明できれば、その経験は次につながります。
灘中のように初見への対応力が求められる試験は、正解のパターンを覚える学習よりも、考える過程を鍛える学習が重要になります。言い換えるなら、長い時間をかけて日本語そのものに親しんできた量と深さが試される試験だと考えておいたほうがよいでしょう。
2026年度にはパレスチナを題材とした現代詩を出題
2026年度の国語2では、パレスチナをめぐる状況を背景とする2編の現代詩が出題され、マスメディアやSNS上で大きな話題となりました。
日本最難関の灘中学の国語の入試問題で、ガザ地区のパレスチナ人の子供の詩が出題されました。 pic.twitter.com/IXZNtE0Bzr
— Kazuki Fujisawa (@kazu_fujisawa) January 19, 2026
出題されたのは、ゼイナ・アッザーム氏の「おなまえ かいて」と、ムスアブ・アブートーハ氏の「おうちってなに?」です。
ここで注目したいのは「来年も国際情勢を扱った作品が出るから、ニュースを暗記しよう」という話ではありません。戦争、科学、文化、歴史、テクノロジーなど、文章が扱っているテーマについて多少なりとも背景知識があれば、筆者や登場人物の言葉をより立体的に受け止められますが、大切なのはその順番です。
出題されそうだから社会に興味を持つのではなく、普段から世の中の出来事に興味を持ち、自分なりに考えていることが、結果として国語学習に結びつきます。志高塾が作文や読書を重視しているのも、そのためです。
「国語の難しい問題が解ける子」になろうとするのではなく、さまざまな物事に興味を持ち、考える材料を増やす。その蓄積が、突然出会う未知の文章に向き合う力にもなるでしょう。
【学年別】灘中の国語対策ロードマップ

灘中を目指す場合、国語はいつから、どのように対策すればよいのでしょうか。結論、学年が低いほど「灘中の入試問題を解くこと」を急ぐ必要はありません。
むしろ、小学4年生・5年生の時期は、過去問には触れず、本質的な国語力づくりに時間を使うことが重要です。
【小学4年生・5年生】本質的な国語力の土台を作る
灘中合格を目指す場合、まず小学4年生・5年生では、過去問の形式に慣れることよりも、読む・考える・書くという国語の基礎体力を高めましょう。
具体的には、
・本や新聞を読む
・分からない言葉をその都度調べる
・調べた言葉を会話や作文で使う
・読んだ文章を短く要約する
・「なぜそう思うのか」を言葉にする
といった習慣を身につけられるようにします。そして、ここで大切なのは、受験に出るかどうかで学ぶ内容を選ばないことです。
一見すると入試とは関係がなさそうな読書や会話、社会への興味が、数年後に初見の文章を読み解くための材料になることも十分あり得ます。
目の前の点数だけを最短距離で取りに行くのではなく、本質的に考える力を蓄える。一見遠回りに見えるその学習が、最終的には難しい問題にも対応できる確かな道筋になるのです。
【小学6年生の1学期】初見の文章への対応力を高める
小学6年生の前半からは、入試を意識した読解問題にも徐々に比重を移していきます。ここでは、「なんとなく答える」というケースを減らしていくことが大切です。
問題を解いたあとは、
・なぜその答えを書いたのか
・設問では何を問われているのか
・自分の解答には何が足りなかったのか
を考えさせ、正解した問題についても、理由を説明できなければ振り返りが必要です。
灘中の入試で求められるのは、見たことのある問題を解く力ではなく、見たことのない問題に、自分の思考力・表現力を使って向き合う姿勢だからです。
【小学6年生の夏休み以降】過去問で最終調整をする
小6後半になれば、過去問演習も重要になります。
ここでは、
- 試験時間
- 問題構成
- 記述量
- 自分が時間を使いすぎる問題
などを確認し、持っている実力を本番で最大限発揮できる状態に調整します。
過去問を扱う際には、解いた問題について、「なぜ間違えたのか」「次に同じような問題が出たときに何に気を付けるべきか」まで振り返ることが重要です。一般的に過去問対策は、傾向と対策をつかむものと思われがちですが、それは本質的な国語力を作ったあとの「仕上げ」です。
過去問だけで一から実力をつけようとするのではなく、それまでに培った力を灘中の形式でも発揮できるようにする。この順番を意識してください。
灘中合格を目指すなら「国語」を武器に

灘中入試のデータを見る限り、最も大きな点差が生まれやすい科目は算数ですが、だからといって国語も付け焼刃の感覚的な対策で乗り切れるものでもありません。
さらに国語は、算数で思うように実力が発揮できなかったときに、合格可能性を残してくれる重要な得点源です。そして、灘中の国語対策で本当に目指したいのは、「灘の問題だけが解ける子」になることではありません。
志高塾では一人ひとりに合わせた指導で、中学受験はもちろん、将来にも役立つ「本質的な国語力」の定着を目指しています。
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