
2018.04.17Vol.346 未来
「先生すっかり忘れてませんか?」
とまるで私に問いかけるように、vol.344「噛めば噛むほど」で取り上げた大学1回生の女の子から昨日メールが届いた。実際、別の話題で文章を作成し始めていたのだが「いかんいかん」ということで切り替えた。メールは次のように始まる。
「作文のお題決めてもらえませんか?書くことありすぎて困惑してます。
とりあえずめちゃくちゃenjoyしてます。」
その後キャンパスライフに関することを楽しそうに報告してくれた。おいしいBBQの店も見つけたとのこと。おごり役として呼ばれる私としては、リーズナブルなお店であることを願うばかりである。ちなみにお題は「未来」で決定。6月ぐらいには出てくるのだろか。
彼女が筑波大に行くと決めたとき、めちゃくちゃうまく行くか、まったく気に入らないかのどちらかだろうと思った。要は「それなりにやってます」というのはないだろうと。そして後者であった場合、もう一度東大を受け直すことになるのだろうと。
vol.344「噛めば噛むほど」に掲載した文章の中で私が引っ掛かったのは
「東大の開示を友達と比べた時、うわ、入試しょーもな、って心から思いました。その友達は理IIIに落ちたんですけどマジで数学出来る人で、その子と私数学が2点しか変わらなかったんです。そんなテスト、もう1年受ける気にはなれません。」
の部分。彼女の本音であるとも言えるし、そうでないとも言える。あのタイミングだからこそ、文字に起こされたものである。もし1か月後であれば、頭に思い浮かんでも言葉としては外に出てこなかったはずである。最終的には、その瞬間的な言葉だからこそ逆に載せる意味があると考えた。
入試はオリンピックとは違う。金メダルは最高の人にだけ与えられるのに対して、合格は最低点を超えた人たち全員が対象となる。適切な学校を選び、適切な準備をすれば結果は必ずついてくる。そして、東大は彼女にとって適切な学校であった。つまり、何かが足らなかったのである。筑波大の合格が分かる前に彼女が私に次のようなことを話していた。「私の周りにはどうしても東大に行きたいから一浪する人がいる。でも、私は大学院で海外に行くから、1年費やしてまで東大に行く気はしない」と。これは1か月後も、半年後も、1年後も変わらない継続的な本音である。どちらの選択が正しいというのではない。ただ「とりあえず東大に行く。そして、その後のことはそれから考えればいい」という人は少なくない。彼らよりも彼女の方が未来に目を向けていることだけは確かである。そして、それはとても価値がある。また、東大といったような何かしら世間から評価されるような肩書がないと自分を保てない人もいるが、彼女はそうでない。
私は事あるごとに「将来に役立つ力をつける」ということを口にする。それが何であるかは自分でもよく分かっていない。分からないから「将来に役立つ力」とは何かを考える。ただ、それはテストで点数を取るためのテクニックでないことだけは確かである。要は、何でないかは分かっているということだ。彼女も含め、我々が関わった子供たちが、大人になり社会で活躍する。それに少しでも貢献したい。