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2017.04.11Vol.297 ILT

 いつぐらいから使われるようになったのかは知らないが、私が社会人になった15年ほど前の時点で、OJTという言葉は一般的なものであった。”On the Job Training”の略である。研修の一手法であり、座学とは異なり実際の仕事をしながら学ぶというものである。
 昔に比べ、今のスポーツ選手は筋トレを積極的に行う。筋トレ機器、スポーツ科学の発達などがそれに深く関係している。たとえば、プロ野球の場合、そのようなトレーニングを行っているにも関わらず、怪我をよくする打者に対して、プロ野球OBがバットを振り込まないからだ、というような苦言を呈することがある。実際にバットを振れば筋肉が連動するわけだが、マシーンを使うとそれぞれの筋肉を分断して鍛えることになる。それゆえ、鍛えられた筋肉とそうでない筋肉との間で歪が起こり、怪我の元になるのだ。イチローも筋トレを行うが、パワーアップを目的にした、単純に押す、引っ張るではなく、ねじりの動作が入っている。実践を想定して鍛えているので怪我をしない。
 OJTと横文字になっているだけで、何かしら効果の高いもののようなイメージを与えるが、多くの場合単なる手抜きである。教育に手間をかけない会社がこの言葉を平気で使う。大した研修もせずにいきなり現場に出し、それをOJTと呼んでいるのだ。
 では、志高塾ではどうか。OJTと座学の連動性を高めることを意識してプログラムを構成している。少々細かくはなるが具体例を挙げながら説明させていただく。授業研修は20コマあり、それを4コマずつに5分割している。1~4コマ目では、とにかく「メモ」を取りながら授業を観察してもらう。2日目の授業研修に来た際に、家で書いてきてもらった『コボちゃん』の作文を提出してもらうのだが、志高塾の書き方(ルール)にのっとって書けているかがポイントである。そのルールを事前に具体的には伝えないので、1日目の授業研修の際に他の講師が指導しているのを見ながら、それを掴まなければならない。もちろん、提出された作文は添削をして本人に返す。また、5~8コマ目では、「授業メモ」を取ってもらう。上の「メモ」は個人的なものだが、「授業メモ」は皆で共有するものだ。これを元に我々は月間報告を作成するので、中身が無ければならない。中身があるというのは、生徒の課題克服につながるポイント押さえられているかどうかなどである。その他、このブログでも紹介したように、使用している教材の教え方を学ぶ以外にレポート課題がある。「現在の教育について」、「志高塾に通う生徒に将来どのような人材になって欲しいか」などがテーマである。新しく入った講師には、インターフォンが鳴れば生徒を出迎えて、初めて会った生徒には自己紹介等などをしてもらうが、8コマが終わるまでは授業中に生徒との接触はない。
 さて、ILT。これは私の造語で、In the Life Trainingの略であり、子供の学習方法に関するものである。小学校の低学年のうちは特にそうだが、いかに座学以外の学びが多いかが重要である。私は折に触れてこのようなことを訴える。たとえば、我が子で言えば、学校の連絡帳はすべて漢字で書くように伝えている。小学3年生になった我が子がまだ1年生だった頃、食卓の上に置かれていた連絡帳が平仮名ばかりで埋められていたのを見て「これはアカン」となった。辞書を調べて漢字で書き直させた。過去の分も遡ってである。1ヶ月に1度ぐらいはそのようなことをさせている気がする。昨晩もちょうど「りにん式」、「自こしょうかい」としているのを見つけたので、今朝指摘をして学校に行く前に修正させた。たとえば、「体操服」などは登場する回数が多いので、1日1回でも毎日のように書いていたら勝手に覚える。音楽会の前だと「合奏」などがよく使われていた。自発的にするというところまでは行っていないが、少なくとも辞書を引くことに特段の抵抗はない。一方で、漢字テストの点数などをチェックすることはない。学期末などにテーブルにどさっと束で置かれていたりすると、簡単に目を通すがそれに対しては何とも思わない。私は何も漢字の効率的な覚え方を教えたいのではなく、勉強することは実生活で役立ってこそ意味があるということを伝えたいのだ。親としては、漢字のそのやり方を、まったく別のことに自分なりにアレンジして応用してくれることを期待している。
 先日、教室で使っていたプリンタが壊れたので捨てようとしていたら、それを見つけた6年生の男の子が「捨てるんやったらちょうだい」と言うのであげた。分解するためである。細い体で、重たいプリンタを今にも破れそうな紙袋に入れて、電車に乗って持ち帰った。後日「先生、やっぱり宝の山やったわぁ」と嬉しそうに報告してくれた。彼に言わせれば貴重な部品がたくさんあるらしいのだ。理科の電気回路の問題で点数を取ることよりも、よほど価値のあることだと思う。
 豊かなILTを積み重ねて魅力ある大人になっていってほしい。未来のある子供たちに接する仕事をする者からの切なる願いである。

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