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2018.11.06Vol.373 スイッチ短編集

第一話
 5年生の男の子が、この12月をもって退塾することとなった。彼が、志高塾に通い始めたのは3年生の夏である。
 今、半年に1回の親御様との面談の時期なのだが、その中で「前回(半年前)、先生に言われた方法を実践してみたらうまく行きました」などと嬉しい報告をしていただくことが時々あるのだが「?」となることは少なくない。何の話かまったく記憶にないのだ。付き合いの長い親御様になると「あの人は忘れる」という前提で接してくださっているような気がする。何も、そこにあぐらをかこうとはしていないのだが、少しだけ気分は楽になる。
 そんな私が、2年以上も前のことなのに、彼が体験授業に来た時のことはよく覚えている。お母様が、我々のやっていることが彼にとって大事だと思って連れてきてくださったものの、他の塾では、勉強するのが嫌で床で寝転がって暴れまわったりしていたとのことで、冷や冷やしながら作文をしている息子の様子を見守っておられた。本人が入りたい、と言ったかどうかは定かではないが、少なくとも嫌がらなかったことは確かである。どのような子供が来ても、腫れ物に触るような接し方はしないのだが、その子に関しては、うまく滑り出せるように幾分か気を使ったような気がする。その後も順調に通い続けてくれた。今、彼は壁にぶつかっている。それもあって、少々やる気が減退している。元々、経済的に余裕があるわけではないとのことなので「本人が後ろ向きなのであれば」ということで今回の決断に至った。逆に言えば、これまでは、そのような状況の中でも彼のためになると思いながら、少々無理をしてでも通わせてくださっていたのだ。お母様には「この壁は乗り越えないといけません。ただ、本人がその気でないのであれば、待つのも1つの手です。『やっぱり志高塾で学びなおそう』となったときに戻って来てくれれば、そのときに、課題を克服しましょう」という話をした。他の塾では追い払われるようにやめさされてきていたらしく「こんなことは初めてです」という言葉をいただいた。手のかかる子をどうにかするから意味があるのであって、それができないようであれば、手のかからない子にもそれなりの授業しかできないはずである。

第二話
「先生、再来週の授業の日が発表なんで、受かってたら、僕と入れ代わりでその日から弟が来ます」
「こらこらこら、そんなシステムはないで。お母さんからまったく相談受けてへんし」
 高三の彼は、推薦入試で無事合格し、三男と入れかわることになった。お母様との付き合いはもう5年以上になる。ある意味勝手なことを言っているわけではあるが、そういうものには嫌なものもあれば、面白いものもある。その後「勝手言ってすみません。曜日や時間はある程度合わせられますんで」というお電話をいただいた。先週初めての授業があったのだが、連れて来られたお母様が「これがあの松蔭先生やで」と声を掛けていた。「どの」という話なのだが、長男は、中三の頃に私にボコボコに言われて、それに反発して途中でやめることになった。公立を受験せずに、彼の成績であればある程度余裕のある私立に志望校を絞ったからだ。彼はその高校で全国レベルの運動クラブに入りたかったのだ。しかも、そのスポーツの経験はなかったにも関わらず。あんな根性無しは絶対にすぐに音を上げる、と確信していたのだが、見事にその予想は外れた。チームは全国に行き、レギュラーにはなれなかったものの最後まで続け、大学にもスポーツ推薦で行った。立派なものである。
 我々は勉強を教えている。だから、成績を上げることや、合格に導くことは我々の果たすべき1つの役割である。ただ、それだけでは意味がない。少しでも、勉強を通して人間を育ててあげたい。ひいては、それが学力向上にもつながるので、逆に、それこそが重要だと言える。その上で作文は非常に効果的なのだ。その長男が自分の好きな高校に行ければそれで良かったのだが、それはそれとして、逃げずにもっと勉強を向き合えよ、というのが私の中にはあった。彼は逃げたのではなく、他にやりたいことがあって、その目的に向かって走っていったのだ。私はそこを完全に見誤った。

第三話
 5年生から通ってくれていた高2の女の子がこの10月でやめることになった。大学受験に向けて予備校に通い始める、というのがその理由。お母様から電話をいただき、「こんなタイミングでやめることになりまして、申し訳ないです」というようなことをおっしゃっていただいた気がするが「いえいえ、逆にこんなにも長い間通っていただきありがとうございました」と返した。切りのいいところまで志高塾で、というのもないわけではないが、既に十分、というのが自分の中にあった。その電話を横で聞いていた中1の女の子が「じゃあ先生、代わりの生徒入れんの?」と聞いてきたので「入れない。そんなもんじゃない。」と返した。

あとがき
 第1話の彼。お母様は12月まで、とおっしゃった。少し期間を延ばすことで、オフにしなくてもいいかもしれない、という可能性を残したかったからだ。私は、11月でスパンッとオフにした方が、その時が来たらスムーズにオンにできるような気がします、というようなことを伝えた。第2話の兄弟。お子様が4人おられるので、同時に点灯すると、ブレーカーが落ちてしまうとのこと。だから、1つがオフになったタイミングで、1つはオンになった。第3話。余裕ができた電力は、新しい誰かのためではなく、今いる誰かのためにとっておく。
 今朝5時ごろ、一緒に寝ていた三男に起こされた。「パパ、トイレの電気がつかない」と。子供たちが乱暴にスイッチを押すせいで、接触が悪くなっているのだ。「暗い中で座ってしな」と返したのだが、その後トイレの方からカチャカチャする音が聞こえてきた。帰ってきたので聞いてみると、ついたとのこと。朝、起きてトイレに行くと電気はつけっぱなしであった。
 つけたいときついて、消したいときに消える。そういうスイッチを用意してあげたい。

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