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【卒業講師】武元由宣(たけもとよしのぶ)

【卒業講師】武元由宣(たけもとよしのぶ)

福岡高等学校卒業
大阪大学文学部人文学科卒業
勤務期間;大学1年生の6月~大学4年生の3月

2026.06.29

補助輪の外れるその日まで

志高塾での日々を振り返ると、講師の皆さんの粘り強さが真っ先に思い出されます。一筋縄ではいかない問いに試行錯誤を繰り返す生徒に対して、「模範解答らしきもの」を示すのは簡単です。しかし、それを堪えて、やり取りを重ねながら生徒が自らの力で己の答えを導くまですぐ後ろで支え続ける講師の姿に感銘を受けました。生徒を教えるというより、見守り育てる、という言葉が当てはまる場所だと思います。

意見作文

※卒業講師には、現役生徒の参考になるよう教室で扱っている意見作文のテーマの中から1つを選択し、作文を寄稿してもらっています。

選択テーマ:あなたの一番楽しい時間について述べてください。

中学校で陸上部に入ってから、かれこれ10年以上ランニングを続けている。といっても大学進学以降は気が向いたときに走る程度で月に一度も走らなかったこともあったほどだが。

自分の体を一定のテンポで前に進めるシンプルな競技、長距離走は才能よりも日々の努力が特に重要と言われている。適切な練習を積めればそれが記録に直接反映されるし、逆も然りだ。実際私も、運動神経が悪く元の走力が低かった分、練習すればするほどタイムが伸びて、それがモチベーションに繋がったところがあった。

しかし、振り返ると高校時代は1年以上自己ベストを更新できない時期があったし、今は記録を追い求めて走っているわけではない。それでもランニングへの意欲が極端に低下することはなかった。すなわち私を駆り立てている要因は他にあるということだ。

私は走ることを通して自分と対話するのが好きなのだと思う。

長い距離を走る際は一定の余裕を残し続けることが肝心だ。レースであっても全ての力を解き放つのはラストスパートのときだけだ。そうでないと最後まで身が持たないからだ。

無我夢中になる時間が少ないので、その分自らの走りについて考える機会が多くなる。風を受けながら問いかける。呼吸や汗のかき方はどうか、ペースはどうか、心拍数はどうか。快調に足が動くときは勿論気分がいいし、息が上がっているときもある種の心地よさがある。大げさな言い方かもしれないが、生き物としての自分を思い出すような感覚があるのだ。

先日、初めてフルマラソンに挑戦した。マラソンは他の種目以上に、常に身体の声に耳を傾ける必要がある。距離も時間も長く、勢いだけで乗り切れるものではない。筋肉の張り、喉の渇き、様々なサインに注意しながら走った。ただ、多くのランナーがそうであるように、「30㎞の壁」(疲労が蓄積する30㎞以降に大きく失速して記録を落とす人が多いため、このように呼ばれている)に直面しながらのゴールとなった。終盤は呼吸が浅くなって溺れているようなきつさがあり、かえって笑いが出てくるような心地だった。沿道の声援がなければ心が折れていたかもしれない。それでもフィニッシュラインにたどり着いた。自分と向き合い、めげずに己を鼓舞し続けることが出来たからだと思う。

ただ実際のところ、レース終盤の脳を支配していたのは、一刻も早く終わってくれという思いだった。どう取り繕っても苦しいものは苦しい。だから、当時の私がこの文章を見たら、もっともらしいことを述べるなと憤りそうだ。しかし私はそれでも懲りずにまだ走り続ける。

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