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2021.11.02Vol.517 親として

 中学受験を予定していた小6の男の子が、志高塾を急に辞めると言い出した。それは同時に、受験をせずに地元の公立中学に行くことを意味していた。そこまで明確な意思表示をしたのは突然ではあったのだが、6年生になった頃ぐらいから気持ちはぐらぐらしていて、お母様と本人との間では「受験を辞めるの?辞めないのを?」を繰り返し、悪化の一途を辿っていることは私に逐一報告が来ていたので驚きではなかった。その彼が、夏休みからでも気合を入れて取り組んでいれば志望している中堅校には合格できていたはずだ。進学塾は、「この○休みが勝負だ」と、少なくとも5年生の夏ぐらいから受験まで発破をかけ続ける。その言葉は、緊急事態宣言時の自粛のお願い同様に、加速度的に効果を失っていく。6年生の夏休み前に合格率20%ぐらいのところにいれば、夏期講習できちんと勉強する態勢を作って、秋から勝負をかければかなりの確率で合格に持って行ける。ただ、それには2つ条件があって、志望校が難関校(近畿圏で言えば、男女合わせて10校もない)以外であることと夏期講習前までに勉強に疲れていないことである。
 その発言があったのが先週の木曜で、結果的に土曜に挨拶に来ることになった。本人は、連れて来られることに中々首を縦に振らなかったのだが、最終的には受け入れた。その彼を翻意させるために「ここで辞めちゃったら、折角これまでやってきたことが無駄になるぞ。今から頑張れば間違いなく合格できるから、俺たちと一緒に最後まで頑張ろう」などという、何も考えて無さそうな人が言いそうな気持ち悪いことは絶対に口にしない。もし、上のものをベースにしてメッセージを伝えるのであれば、「これまで大してやってきてないのだから、最後ぐらい頑張ったら。合格はかなり厳しいけど可能性はゼロではない。真剣に取り組めば、たとえ不合格でも得られるものがある。やる気があるのなら、俺たちにやってあげられることはそれなりにある」となる。
 話し合いの冒頭で、「ちゃんと来たことは偉い」と褒めた。そして、「『辞めます』ということとその理由を自分の口からちゃんと説明しなさい」と続けた。結局、それを聞くのに1時間半ぐらい要した。中学生か高校生の頃のどちらか、いや、いずれもという可能性が高そうだが、「5分だけで良いから静かにするように」というような注意を先生から受け、そんな長時間には耐えきれず「おまえは、そんだけも我慢できないのか」とよく怒られていたような気がする。だから、その間私が辛抱強くずっと黙っていたわけではない。
 「あのな、俺の長男はサッカーが下手なんだけど、小学生の頃、大雨の日でも自転車に乗って1人で片道30分ぐらい掛けて週2回通い続けた。5年生の二男は、昨日ちょうど一泊二日の林間学校から帰って来た。予め学校まで自転車と着替えを持って来て欲しいとお母さんにお願いしていて、その場で着替えてちゃんとサッカーに行った(もちろん片道30分掛けて)。二男も下手やから悲しいことにBチームやねんけど、同じクラスのAチームの子は疲れてるから休んだらしい。さっきまで、あなたと同じ6年生の受験生の男の子のお父さんとお母さんと面談をしてた。その中で、2人揃って『あの子は100%努力してる』というようなことをおっしゃってた。親が子供に対してそのような評価をすることは中々ない。結果が出るに越したことはないけど、親としては子供が頑張っている姿を見れたら『この子は、大丈夫だ』と思えるもんやねん。今のあなたには分からんやろうけど。」
 ぺちゃくちゃと話しては、「そろそろ言えるか?」と尋ね、機が熟して無いのを確認して、また私が口を開く、ということを小刻みに繰り返していた。ただ、来たときから背中を丸めてうつろな目をしていたので、そのことを指摘して「あのな、『いかにも、僕、被害者です』みたいな感じを出すな。せめて、背筋をぴしっと伸ばして、こっちをしっかり見ろ」と注意した。最終的に「辞めます。僕の勉強のやり方に合わないからです」という言葉を引っ張り出した。「あのな、一生懸命やってない奴に、自分のやり方もへったくれもない。できるようになろうと思っていろいろ試した奴だけが、自分に合っているかどうかの判断ができるねん」ということは指摘した。彼の高1になる兄は、小学生の頃から6年以上に渡り通い続けてくれていることもあり、お母様との距離も何ら変わらない。よって、少なくともしばらくは彼の成長を離れたところから見守って行くことになる。
 昨日、3年生の男の子のお母様から「随分前(2時間以上前)に学校を出たのですが、まだ帰ってきていないので振替をした方が良いでしょうか?」と聞かれたので、「(時間が遅くなったことで)送り迎えができないのであればそうしますが、そうでなければ連れて来てください。わざとそんなことをしているので、休みにしたらまた同じ手を使います」と返答した。本人が来た時には、「いつもより一本多く書いてから帰れよ」と伝えた。ズルをするのは構わないが、そんなことをしたらもっと痛い目に遭うことを教えてあげないといけない。世の中がそのような仕組みになっているからだ。この一件で彼は二つも得をしている。既に述べたズルをしたらどうなるかを経験し、かつ、いつもより作文をたくさん書くことで頭を鍛えられるチャンスを与えられたからだ。
 時に「情熱的だ」と評されることがある。自分自身のことだからよく分かるのだが、情熱なんてこれっぽっちも持ち合わせていない。だが、そのように誤解されるとしたら、上のような対応をするからなのかもしれない、とふと思った。煙草をポイ捨てしている人を見かけたら、嫌な気になって終わりである。仮に、そういうことを友人がしていたら、見て見ぬふりをせずに「みっともないからやめた方がええで」と注意する。そもそも、そんな人とは仲良くはならないが。仕事だからとかお金をもらっているからとかではなく、関わった人だから。それ以上でもそれ以下でもない。

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