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2022.07.12Vol.550 晴れ時々受験

 5月に行った半年に1回の面談で、中2の生徒のお母様が次のようなことをおっしゃられた。「中学受験の直前は不安になって、先生のブログを遡ってかなり読んで、『言うことは一貫している。最後まで信じよう』となりました」。受験後1年経って初めて聞いた話であった。
 「言葉自体が適切であることは当たり前で、それを誰が発したのか大事。この人の言うことなら聞こう、とならなければその言葉は意味を持たない」ということを社員によく話す。「言葉自体が適切であることは当たり前」と表現したが、実際は確信を持てるわけではない。また、初めからそれなりに正しいことが保障されているのであれば、その言葉自体にさしたる価値は無い。単なる一般論に過ぎず、「それなり」は「それなり」の域を出ないからだ。たとえば、「受験に備えて朝型に切り替えた方が良い」と言われても、聞いた方は「そりゃそうですよね」となって終わりである。先日、低血圧の高校3年の生徒の起床について、お母様と話していた。まだ先のことなので具体策を提示したわけではないのだが、もし、その子が余裕で合格する状態であれば、少なくとも1か月前ぐらいから体を慣らして行けば良い。コンディションを整えることが合格率を上げることにつながるからだ。一方で、受験直前まで少しでも実力の上積みをする必要があり、無理に早起きすることで一日の勉強の効率が下がるようであれば、あえて1週間前まで体に負担の掛からないそれまでの生活リズムを守らせる。頭が働いていない状態で試験当日のタイムスケジュールで過去問を解かせても結果が付いてこない。すると、「この時期でも合格点に達しない」と心にもダメージを負うことになる。その切り替えをさせるは、場合によっては3日前かも知れない。3日前なのか、1週間前なのか、それとも10日前なのか。そんなものに正解は無いのだが、「このやり方があの子には合っている」と一定以上の自信が持って伝えられるように、その生徒のことをきちんとイメージして最適解を探る。いろいろな生徒に対して頭の中でそういうシミュレーションを積み重ねることで、「この人の言うことなら聞こう」の「この人」に近づいて行けるはずなのだ。
 冒頭の段落の話題は、前回のブログで触れたオシントに関する一例である。先週アップデートした後に、「そう言えば」と思い出した。そのお母様が不安になったのは、私の提示した対策は直感的にそれなりに正しいと感じられるものの一般的ではなかったからだ。そして、その確度を探るためにブログの読み直しをされたのだ。それを周りの受験を控えるお母さん達に話したところで、「そんなんで大丈夫?」と返ってくるのが関の山だ。実際、「周りのお母さん達に心配されるんですけど、大丈夫ですよね」という相談を受けることは少なくない。その時にはできるだけ丁寧に説明することを心掛けている。私の提案は一般的でないがゆえに奇抜な印象を与えるが、私に言わせれば、一般的な処方が誰にでも効果があると疑わずに押し付ける方が乱暴である。そして、結果が出なければ「あれでうまく行った子は多いんですけどね」と生徒に責任を負わせる。少し変わった例えをすると、スーパーでの買い出しに関して、「普通のお母さんって、こういう風に買い物の仕方をするからそうした方が良いですよ」とアドバイスをされても「知らんがな」となるはずなのだ。小まめに買い出しに行くのが好きな人がいれば、まとめ買いを好む人もいる。一カ所で済ませる人もいれば、肉はここでフルールはあそこ、と食材ごとで場所を変える人もいる。予め何を買うかを決めておき、メモに書き出した通りに効率良く回る人もいれば、行ったり来たりを繰り返しながら、メインになる食材を選んでその日の献立を決める人もいるかもしれない。その行ったり来たりするお母さんがフルタイムで仕事をしているからと言って、「こういう風にすれば買い物の時間を半分にでき、少しでも時間の余裕が生まれますよ」というアドバイスが真に効果的かは分からない。家に帰るまでのその一人きりの時間が息抜きになっている場合もあるからだ。「時間の余裕=心の余裕」と決めつけるのは、あまりにも短絡的過ぎる。
 受験直前に親に迷いが出るのは、よくある。そして、受験に限らず、そういう時には原点に戻ることが大切になってくる。なぜ中学受験をすることにしたのか、どのようなスタイルの中学受験を望んでいたのか、という問いに対する答えを思い返してみることである。志高塾では、6年生になっても、これまで通りスポーツなり音楽なりに力を入れながら、受験に臨む生徒も少なくない。大抵の場合、入塾前にそのようなやり取りをしている。「大手の進学塾に行くと、これまで頑張って来た習い事を辞めないといけなくなります。志高塾だと、並行しながら受験にも合格できますか?」。どこを目指すのか、どれぐらい授業の時間が取れるのかを確認した上で、「十分に合格できます」、「それはさすがに難しいので、志望校を再考するか、勉強時間を増やす方法を考えるか、少なくともいずれかが必要です」とお答えする。「原点に戻る」としたが、その上で、原点からその時点までの線を辿るのだ。中学から灘に通っていた生徒が、高校のあるタイミングで急に成績が伸び、その子のお母様は教育熱心なお母さん達から「どうしたらあんな風になるのです?」と尋ねられたらしいのだが、「それまでの育て方が全然違うので、うちの子のやり方が他の子にも効果的なわけではない」という考えの元、何も答えなかったのとのこと。受験直前でやり方を変えるのというのもあるが、基本的には線は滑らかな方が良い。想定していた右肩上がりの曲線と実際のずれを確認しながら、その都度手を打って行く。最後までそれを粛々と続ける。受験と言うのは、そういうものだと私は思う。

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